空白感情
のりまきさん
第1話 失ったもの。
幸せ。悲しみ。
この世界には大きく分けてこの2つの感情が存在していると思う。
けど、僕は幸せな感情を知らない。
僕にあるのは悲しみの感情だけだ。
僕は小さい頃、感情を何1つ持っていなかった。何をされようが何も感じなかった。
決して笑ったり、泣いたりはしなかった。
僕が感情を知ったのは4歳の頃だ。
父親に感情の知り方を教えてもらった。
悲しみ。涙を流すこと。
この感情は母親から貰ったものだ。
正確にいうならば取り込んだ、ものだ。
次に知った感情は恐怖。
これを知ったのは僕が初めて自分から進んで取り込んだ時だ。
別に初めてだからって緊張も何もしなかった。だって僕には、そんな感情はないから。
ただ淡々と感情を取り込んだ。
そして僕が最も大切にしてる感情。
それは高揚。これは父親から貰ったものだ。
殺人鬼であり、食人を好んだ父から貰った感情。
大きく分けてこの3つ。他にも色々と取り込んでみたが、記憶に残っているのはこれだけしかなかった。
僕には幼馴染がいた。よく笑う子だった。
両親がいない僕をいつも暖かく接してくれた。僕には幸せの感情はないけど、幸せってこの子みたいな感情なんだろって感じた。
僕は幸せの感情が欲しかった。
最初は我慢していたが、欲しくて欲しくて我慢できなくなった。
そして幼馴染にこう言った。
幸せの感情が欲しいって。
彼女はこう言った。
どうしても?
僕が無言で頷くと、彼女は迷いながらも僕にいいよって言った。
その日の夜、僕は彼女を殺した。
彼女は死ぬ時こう言った。あなたのために死ねるなら本望だよって。僕にはその感情がわからなかった。だから欲しかったんだ。
僕は彼女の頭を切り落とした。感情は頭から取り込めるから。
そして今、彼女の頭は目の前に転がっている。
いただきます。
がりっ。がしゅっ。びちゃ!もぐもぐ。
ただ僕からは涙が溢れるだけだった。
空白感情 のりまきさん @Norimaki-Gohan
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