第70話
「奈美さん、靴の履き替えとか用意してきています?」
「今履いているローヒールと、スニーカーを持ってきました」
「どちらも大丈夫ですが、アムス市内の石畳とかで、つまずいたり転んだりしない様に、最初はスニーカーの方がベターですかね」
ーーーーー
「Hello, two persons.」
オーナーがテーブルまで案内してくれる。
店の窓側の街の眺めの良いテーブルに案内してくれた。
「さて、奈美さん何にします? ここは肉系がオススメです」
「加藤さんにお任せします」
「じゃあ、森下さんの好物だった料理コースで行きましょうか」
「北京ダック、かた焼きそば、ナシゴーレン。ですかね」
「その、ナシ…… 何とかってなんですか?」
「インディカライスを使ったチャーハンみたいなものです。インドネシア料理ですが、オランダの中華料理店にはどこでもあります」
「飲み物はビールでいいですか?」
「はい」
「奈美さん、海外旅行の経験は?」
「学生時代に、ニューヨークとマイアミ、グアムに行ったことがあります」
「じゃあ、アムスでもどこでも日中の一人歩きとか全然大丈夫ですね。安心しました」
「オランダでは美術館、コンサートホール、などなど美術、音楽を始めとする様々な芸術が楽しめます」
「九州くらいの国土で、約700近い美術館、博物館や、それに準ずる施設があるんです」
「すごいですね。私、大学時代美術部だったんです。近代西洋絵画好きですが」
「オランダでは、古典派から、ほぼあらゆる時代の絵画やアートを鑑賞できます。ミュージアムカードを買ったらいいですね。美術館4-5箇所行ったら元が取れます」
「ぜひ買います! 今からワクワクで楽しみです」
「加藤さんのご趣味は?」
「音楽と植物、花です」
「私もクラシック音楽大好きです。高校時代はオーケストラでフルートを吹いてました」
「それもいいですね。奈美さんのいる間、夜は足繁くコンセルトヘボウに通いましょうか」
「はい。それも楽しみです。あれ? なんだか変です。身も心も軽くなって嬉しくなってる。ただ、日本の療養所で沈み込んでいる彼のことを思うとすぐに・・・」
「美奈さん。慌てない、慌てない」
「ここオランダでは、ヘブル語的な時制概念でいきましょう」
「ヘブル語の時制概念はかなり自由です。ヘブル語の時制は、完了形と未完了形の二つしかないんですが、未完了形といっても必ずしも未来の行為を表わすとは限りません。過去の行為を表わすこともできます」
「過去と未来を厳密に分けません」
「なぜなら、神様は常に働いておられますから、過去に行われたことは未来においても現実となるからです」
「ですから、未完了形が過去の行為を表わすと同時に、未来の行為をも表わすことができます。また反対に、完了形がまだ起こっていない神様の行為に対しても使われます」
「神様が確実に実現されることは、たとえまだその出来事が完了されていなくとも、完了形で表わされることが多いんです」
「例えば、完了形を白い粘土とします。未完了形は赤い粘土」
「時制を混ぜます。美しいピンク色。それが、こころだと思います」
「僕が言いたいのは、こころに時制はないんです」
「こころって、愛のある場所です」
奈美さんは、しっかり頷く。
「さて、美味しい料理、食べましょうか」
ーーーーー
「Hi, Ruth」
「Good evening, Masa」
ルースは優しく迎えてくれる。いつもの優しい青い瞳。
「How is it going, Masa?」
(調子はどう?)
「So so, and you?」
(まあまあかな。ルースは?)
「Not bad.」
(まあまあよ)
奈美さんは、疲れが残るといけないので、宿で休んでもらうことにした。
いつものシャブリ。身も心もワインに揺られる。
Ruthに奈美さんのこと、森下さんのことを少し話した。
「Only she can change her life. No one can do it for her.」
(彼女の人生を変えられるのは彼女だけよ。誰も彼女のためにそんなことしてくれないわ)
「We can change her true love. Everyone can do it for her.」
(でも、彼女に本当の愛を気付かせる事なら、みんなでできるわよ)
まきちゃんからメール、
まさ君へ
『私たちがすることを奈美さんが喜んでくれればそれでいい』
『私たちも喜び、彼女の喜びも大きくなるように』
『私たちの愛、そして、信頼と感謝も深めるの』
『それは奈美さん自身の気付きなの。皆で気付かせてあげましょ』
『愛は飽く事なく、永遠に心をなだめるものだから』
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