夕闇ブリッツ
タチバナタ
序章
その光で僕の姿は暴かれた。
一瞬の稲妻だった。だけれど、僕の姿を見るには十分すぎる時間だ。
目を反らしたくなったのは、眩しさのせいじゃない。だって僕は、その輝きを前から知っていた。
刹那でも、一瞬でも、儚くても。
彼女は強く輝く。
闇夜を走る稲妻は、か細くそよ風で折れてしまいそうに見える。しかし、その実、稲妻は地面を揺さぶる雷鳴をとどろかせる。
彼女の強さを僕は知っている。
僕だけが知っている。
だからこそ、僕が守るべきだった。
純白のシーツが引かれたベッドに横たわる彼女の頬はすすで黒く汚れている。その柔らかい肌を傷つけないように、優しく擦って消しても、彼女は微動だにしない。
微かに聞こえるのは小さな口から聞こえる途切れ途切れの息遣い。
彼女はここで事切れる。そんな青ざめるような確信を持ってしまう。
後悔の念は止めどなく押し寄せる。
懺悔の告白をして取り戻せるのなら、神
に膝まずいて足を舐める。
しかし、神は喜劇を祝福しても悲劇は傍観するばかりだ。
祈っても奇跡は起きず、磔にしたところで革命が起きるはずもない。
ならば悪魔に魂を売ろう。
夕闇から景色を眺め続けるのはもう止めだ。
今日、この時より、僕の半身は黒く染まる。
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