ホラーとは?
怪談ではないのですが、日常的にそういう体験をしている者として、"ホラー"というジャンルに対するわたしの立場や考えかたを明確にしておきたいと思います。
まず大前提として、わたしは"幽霊"を信じていません。
それでいて、自分の体験に科学的論理的な説明を求めてもいません。
幽霊を信じていないというのは、いたとしても怖いものと認識してはいない、という意味です。
たとえば、わたしは山生まれ山育ちですが、実は、周囲から人の気配が消え失せるという現象自体はなんども経験しています。
山に入ったらあったはずのアスファルトの道がなくなっていて首を傾げるなど日常茶飯事ですし。
もちろん、"本当にまずいもの"にチャンネルが合ってしまった経験がないのは非常に恵まれたことであるというのは理解しているつもりです。
ただ、この世のすべてが理論や科学で説明できるものではないということは信じていて、それは当たり前に存在し生活に根を張っているものであって必ずしも恐怖の対象ではないということも信じています。
信じている、というか。
つまらないじゃないですか、この世のすべてに理屈があったら。
運、とか、めぐりあわせ、とか、目に見えないものを全部否定していたら、すごく生きづらいと思うのですよ。
異界に行って戻ってきたけどここは本当に元いた世界なのか、というオチの"怖いお話"も一定数ありますけれど、あれ、わたしにとってはぜんぜん怖くないものです。
なぜなら、その"世界"の定義が曖昧だからです。
住めば都という言葉もあることですし、どこだって、楽しければいいと思います。
あるいは。
この世に、未練がまったくないからです。
生に対する執着が極めて希薄なので、死ぬことに本能的な恐怖を覚えることがありません。
実はわたし、生まれてすぐくらいにいちど死にかけておりまして。
どうにも引っぱられやすいのは、あちら側に片足突っ込んでいるからではないかと思っています。
わたしが怖いと感じるのは、都市伝説や怪談を、"作っている人間がいる"事実です。
それから、ひとの痛みは想像することもしないくせに、どこの誰だかわからない相手の恐怖には簡単に共鳴してしまう、人間の情緒そのものです。
怪談やホラーがわたしにとって怖いものではない最大の理由は。
この世でもっとも恐ろしいものは人間だと、思っていることだと思います。
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