第7話闘いはいつも突然に

「…様、シトレア様!」


「ふえっ!?」


俺の目の前には、ヨメナたちの顔があった。

どうやら俺は、あの空間から戻ってきたらしい。

俺はゆっくりと立ち上がる。


「それにしてもすごい光だったわね」


「はい、そうですね…いいままで見た中で一番強い光でした…私たちの中の言い伝えですが、その神様と仲が良いとより光が増す。っとのことでした。」


「では、シア様は神様と仲が良いということなのですね!」


「ええ、羨ましいですよね!神様と仲が良いって!私も憧れます!」


「本当にシアはすごいわ!」


それぞれ三者三様に俺に賞賛する。


「それでシア、魔法適性と固有スキルのこと何かわかった?」


「うん!」


だが俺は、本当のことを言うべきか迷っていた。


魔眼については、能力が強すぎる。

この魔眼の能力をここで言いふらしてしまうと、悪用しようとする奴らがこの話を耳に挟んで、危険な事に巻き込まれる可能性がある。


それは危険だ。

俺は別にいいが、ヨメナやオシエ、身近な人が狙われる可能性もあるからだ。


あと、創り出す魔法クリエイティブも、強力すぎるため、秘密にして置いてたほうがいいだろう。

でも、右目のことについては、見えてなくてずっと心配されていたから素直に言っておこう。


結局俺は、前世で使うことが出来ていた魔法適性と、右目に魔力を通せば、目が見えるようになるということだけを伝えた。

だが、ほかの能力に関しては触れなかった。


でもそれだけ伝えただけで、ヨメナやオシエに「すごい!」と褒められまくった。


まぁ、四つの属性を使うことができるだけでも凄いからな。


そんな調子で俺は、ヨメナとオシエと手を繋いで帰り道を歩いて行った。




そんな帰り道の途中。

ヨメナトオシエが今晩の俺の誕生日パーティーのために、食材を買いたいと言い出したので、街の商店街通りで買い物をする事にした。


「すみませーん。トマト二つ、ピームン二つ、イチゴ一袋ください」


「はいよっと。お金はしっかりもらったよ!嬢ちゃんたち可愛いな!目の保養にもなったし、お礼にこれでももってきな!」


そういいながら、花リンゴというものを三つ手渡しでくれた。

花リンゴは、中を半分に切るとわかるが、花のような形をしているらしい。

だから花リンゴと呼ばれたとか…


「おじさんありがとう!」


俺は、おじさんに満面な笑顔をしてお礼を言った。


「おうよ!」


そして俺たちは、片手に花リンゴをもって齧りながら、買い物の続きを始めた。


その後も買い物は続く。


何個か店をまわっているうちに、一時間近くが経過しようとしていた。


俺の今の身体はすぐに疲れてしまう。

それが故に、まだ一つ買い物したいものがあったが、それがベンチの近くにあるのもあり、俺はその間、ベンチに腰をかけて待つことにした。


そんな時、足元から鳴き声が聞こえた。




何だろうと思い足元を見ると、一匹のネコがいた。


その猫は、俺に抱っこして欲しそうに、俺の膝まで自力で上がろうとしている。


少し可愛そうだと思った俺は、そのネコを抱き抱えて膝の上に乗せてあげた。


するとその猫は、あくびをして気持ち良さそうに寝てしまった。


ただ俺の膝で寝たかっただけかよっ!


そんな猫を呆れて見ていた俺だが、いつしかネコにつられて一緒に寝てしまった。




ーーーーーーーー

《ヨメナとオシエ視点》




オシエが肩にかけているバッグの中に買ったものをしまう。

ヨメナは空間魔法を使うことが出来るが、毎回荷物をしまってあげると堕落してしまう可能性もあるため、ヨメナはよっぽどのこと(シトレアとかシトレアとか)がないと使うことはなかった。


「ヨメナ様、全て買い揃いましたね!」


「そうね。じゃあ、シアのとこに戻りましょうか。シアが待ってるわ」


「はい!」


ヨメナたちはちょっと早めに歩く。

歩いている途中何故か知らないが、周りの人たちが少し慌ただしそうにしている。


シトレアのところまではすぐに着くことができた。


シトレアは約束通り、ベンチに座って待っていた。

そしてヨメナたちはシトレアに話しかける。


「シア、お買い物終わったから帰りましょ…あれっ?」


話しかけてみるが何も反応しない。

そのかわり、可愛らしい寝息がかすかに聞こえる。


「寝てますね」


「寝てるわね」


ヨメナは、そんな寝ているシトレアの愛らしい寝顔を眺めながら思う。

こんな闘うこともなく何にも起きる事のない日々が毎日送れればいいな。

と。


その願いはフラグだったのか、すぐさま砕け散ることとなった。


「みんなぁ!ドラゴンが街に向かってきてるぞ!逃げろ!」


その言葉に広場の人たちは混乱し、戸惑いを見せる。


すると、ギルド員らしき人がこの場を落ち着かせようとみんなに呼びかける。


「みなさん、落ち着いてください!慌てるともっと危ないです!」


その言葉を聞いた広場の人たちは、少しざわつきは残っているが冷静にはなった。

すると、一人のギルド員が慌てたように広場へやってきて早口で喋り出した。


「この場にいるBランク以上の皆様!大至急この街の正門へ集まることをお願いします!」


すると広場には何人かいたのか、正門へと向かっている。


ヨメナもこの呼び出しの対象に入る。

そしてヨメナは、オシエの方を向く。


「オシエ、少しの間シアを頼んだわよ。ちょっといってくるわ。」


「解りました!絶対にシア様のお命はお守りいたします!」


「ええ、頼んだわよ」


そしてヨメナは、シトレアのに近づき頭を撫でる。


「シア、行ってくるわね?しっかり待ってるのよ」


そう言うとヨメナは、シトレアの頬にキスをして街の正面の門に向けて走り出した。

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