思ってもない一面

 自分が想像以上に嫌になる。


 我の思ってもない一面に気付く、なんて人と接するどこかであると思うのだけど。


 ポジティブな場合とは限らないのだ。


 自分は思ったよりも浅ましいし、思ったよりも身勝手だし、思ったよりも不器用だと。


 そんなことに気付いた日は結構つらい。ああ、そんなときは寝るに限る。しかし、寝れないこともあるのがよりつらい。


 距離を置かれたこともある。


 出会った人は大切にしようと、心がけてきたつもりだが、どうしてこんなに上手くいかないのだろうか。


 考えても仕方あるまい。


 小さな挫折の積み重ねも苦しいものだが、まだ、こんな詩を書ける余裕はある。


 前向きに行こう。


 そう言えば、他者の思ってもない一面はどうだろう。


 考えたことがあるだろうか。


 これが思った以上に、第一印象とあまり変わらない。


 思った通り、この人は優しいんだなって思う。


 すると、向こうから怪しげな帽子を被った男が近づいてきて、耳打ちで僕に言うのだ。


「人間、思ってもない一面は必ずあるよ。それを君が実感してないのは、君が人をちゃんと見ようとしてないからさ」


 思わず、僕はたじろぐ。だが、男はさらにくるっとまわり、今度は逆向きから耳打ち。


「自分のことばかり見てるから、自分の意外性には気づくのにね」


 僕はその場にへたり込んだ。


 その男は、変わらぬ歩速で一本道を歩いてく。


 そのスピードは、僕にはゆっくり見えた。


 人の歩く速さについて考えたのなんて、これが初めてだ。


 自分が嫌になっちゃう。


 でも前向きに、前向きに、い、いこえ。


 やっぱ無理だ。


 でもつらい。


 ま、まに。

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