マトモと

マトモはまともだ。


健全な暮らし、健全な交流、勤勉、早寝早起き、三食しっかり食し間食なし。


最近は健全なお付き合いもしてるらしい。モテて当たり前な彼だが、人一倍紳士なのである。


僕はそんな彼とかれこれ、生まれてからなので、まあ二十年以上の仲なのだが、僕は彼に一種のコンプレックスを持ってる節がある。


それはそうだ。僕も僕なりに、努力してきた。しかし、完璧な人間ではなかったようで、いろんな面で失敗を重ねたのもあり、途中で心折れてしまうこともしばしば。


だけれども、もちろん人と同等の欲求はあるので、三大欲求もあれば、承認欲求もあれば、向上心もあれば、なのに甘えてしまうところもあれば……


まあ、彼にコンプレックスを抱く理由がわかっただろう。


そんなわけだが、彼に憧れてる気持ちもあるし、捨て切れない関係というものもある。腐れ縁とも言っていい。


彼は夢みたいなことを言い、それを叶えてきた存在。なので彼は、腐れ縁の僕がどんなに情けなくても距離を置いたりしないし、僕も彼に見せてもらってる夢があるから、結局は今もずっと仲良くさせてもらってるのだ。


彼の名前はマトモ。


まともなやつで、僕の憧れ。


僕が描いてる理想だ。もう一人の僕だ。僕の自分が嫌だなぁと思うところを、全て乗り越えてきた、理想の僕だ。


だけど、ああ、また早起きできなかった。それに、性に合ってない気がする。


やっぱりあいつとは、なろうとするんじゃなくて、隣で背比べしてるくらいがちょうどいい。


僕は君ほど健全でも完璧でもないかもしれないけど、君と仲良くするのを拒まないくらい、諦めてないんだぜ。

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