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「今日はまた一段と暑いですねぇ」

「そうですね。それでもまだ梅雨は開けていないんだとか」

「気温差が激しくて困りますね」

 この間紅茶専門店で購入した水出しの紅茶を奥さんにサーブする。無糖でも飲みやすい、食事のお供にもできるような紅茶で今のお気に入りだ。家の冷蔵庫にも毎晩作って置いてある。

「体調はどうですか? お腹も目立ってきましたし」

「母子ともに元気ですよ、ありがとうございます」

 奥さんは妊娠六ヶ月。この秋には二児の母だ。

「それならいいんですけれど。今日は暑かったからかな、少し体調が優れないように見えたので」

 つわりとはまた違う感じの。少し早い夏バテ?

「あー・・・そう見えます?」

「はい、見えます」

 即答すると奥さんは一瞬眉根を寄せて、それから呆れたような息を吐いた。

「実はちょっと、その」

「どうしました?」

 言葉を続けようかどうしようか悩んでいるように、一口紅茶を含んで飲み込んだ。

「あの、旦那には内緒にしてください」

「もちろんです」

「実は・・・ちょっと疲れていて」

 疲れている? 仕事に? 育児に? それとも旦那に?

「全部って言うのかな。奈々子も保育園に行ったって言ってもまだ手がかかりますし、仕事もあるし、家のことも。旦那もそれなりに手伝ってはくれるんですけれど・・・逆に手がかかるって言うか。結局自分でしちゃうし。それに」

「それに?」

「・・・二人目の事を考えると、もっとちゃんとしたお母さんにならなきゃって思っちゃって。色んなことで疲れているとは思うんですけれど、本当はそれが一番の原因かもしれません」

 二児の母。言葉にすると簡単かもしれない。世の中にそんなお母さんは沢山いるのかもしれない。仕事に家事に育児に、それから旦那に奮闘するのは母の役目なのかもしれない。それらを分け合う夫婦も多いけど、多分それは一部、だもんな。俺でも“お母さん”の役目を担えるとは思えないもん。やっぱり男はどこかで“お父さん”の役割しかしなくていいと思っているのかもしれないな。

「本当に立派ですよ、奥さんは」

「え?」

「そうやって考えられることもですけれど、実際俺が思うよりも本当に大変なことだと思います。俺が言ってもとても軽いかもしれませんけれど、とても立派ですよ」

 だからどうか気負わないで欲しいと思う。もうすでにあなたは良くやっているのだから。

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