成績表

カゲトモ

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「ごめんくださーい」

 コンコン、とノックの後に聞こえた声。はて? 一体こんな時間にどうしたんだろう?

「はーい」

 答えが出ないまま扉を開けると、そこにいたのは想像通りの人物だ。

「門脇さん、どうしたんです?」

「こんな時間にごめんなさい。あの、実はレモンを一つ、少なくお渡ししていたみたいで」

 そう言って申し訳なさそうに頭を下げたのは門脇青果店の奥さんだ。

「あ、そうだったんですね、気付かなかった」

「本当にごめんなさい」

「いえいえ、俺も気付かなくてすみません」

 さっき冷蔵庫に入れたっていうのに全く気付いていなかったくらいだし、こっちも悪いよ。

「次からはこんなことが無いように気を付けますので」

「いやいや本当に気にしないでください。いつもお世話になっているし、こんなことくらいで」

 レモンの一つよりも今までまけてくれた金額の方がうんと高いんだし、それに馴染みのよしみでしょ。

「これはこれ、それはそれ、ですから」

 それでも頑なに頭を下げるのは、奥さんの良いところの一つかもしれない。とても誠実で安心できる。

「わざわざ持って来てもらってすみません。今度でも良かったのに」

「いいえ、レモンひとつでもスカイさんがお困りになるのが一番困るので。それにすぐそこですから」

 そう言っていつもの笑顔で答えてくれる。でもその顔は少しだけ疲れが滲んでいるように見えた。

 なにも今日が真夏なほど暑いからではなさそうだ。

「あの、良かったらちょっとだけ上がって下さい」

「え、そんなわけには」

「店番は門脇君がいるでしょう? ここまで持って来て下さったお礼です。さぁ上がって下さい」

「それじゃぁ本末転倒と言うか」

「俺がしたいだけですから、ね?」

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