成績表
カゲトモ
1ページ
「ごめんくださーい」
コンコン、とノックの後に聞こえた声。はて? 一体こんな時間にどうしたんだろう?
「はーい」
答えが出ないまま扉を開けると、そこにいたのは想像通りの人物だ。
「門脇さん、どうしたんです?」
「こんな時間にごめんなさい。あの、実はレモンを一つ、少なくお渡ししていたみたいで」
そう言って申し訳なさそうに頭を下げたのは門脇青果店の奥さんだ。
「あ、そうだったんですね、気付かなかった」
「本当にごめんなさい」
「いえいえ、俺も気付かなくてすみません」
さっき冷蔵庫に入れたっていうのに全く気付いていなかったくらいだし、こっちも悪いよ。
「次からはこんなことが無いように気を付けますので」
「いやいや本当に気にしないでください。いつもお世話になっているし、こんなことくらいで」
レモンの一つよりも今までまけてくれた金額の方がうんと高いんだし、それに馴染みのよしみでしょ。
「これはこれ、それはそれ、ですから」
それでも頑なに頭を下げるのは、奥さんの良いところの一つかもしれない。とても誠実で安心できる。
「わざわざ持って来てもらってすみません。今度でも良かったのに」
「いいえ、レモンひとつでもスカイさんがお困りになるのが一番困るので。それにすぐそこですから」
そう言っていつもの笑顔で答えてくれる。でもその顔は少しだけ疲れが滲んでいるように見えた。
なにも今日が真夏なほど暑いからではなさそうだ。
「あの、良かったらちょっとだけ上がって下さい」
「え、そんなわけには」
「店番は門脇君がいるでしょう? ここまで持って来て下さったお礼です。さぁ上がって下さい」
「それじゃぁ本末転倒と言うか」
「俺がしたいだけですから、ね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます