夏の冷蔵庫

石窯パリサク

家と冷蔵庫

家。


住まい。

住まう。

暮らしてゆく家には暮らし向きにつきなすべき事のなんと多い事か。


何代もの先人たちにより受け継がれてきた諸々をもって今も暮らしている。


世代を重ね地縁が深まるにつれて世間が広がる。


つれて隣組や近隣同士に身の回りと共に行う年中行事は規模も広がり増えてきた。果たして年中行事の日が近づくならば、着々と前もって同時並行のマルチタスクで年中行事を身の回りの皆とでもち合いながら、共に春夏秋冬冠婚葬祭などのお互い様である。



冷蔵庫。


一家に一台、白物家電。

一家であり、他家の有様などが混じる余地を持たない家電。


冷凍庫には、その家代々受け継がれている凍った何かが有り続けるモノらしい。

冷蔵庫を買い替える度に代々の母にモッタイナイからと捨てる事を断固拒まれてきた。


家を継ぎ摂生の暮らしを実践すべき累代の母が護り継がされてきた。

モッタイナイお化けによる家督相続の伝説があるらしい・・・・・・・。



などと。

溶け始めた現実を前に妄想しつつ心情的逃避中の私がモッタイナイお化けではないし、何を仕舞ったのかつい忘れちゃったとか、何が何だか色味から判別出来ないけど袋の二重チャックもキチンと閉まっているし当面見ないフリでもまあいっかなと見ないフリ。

つまり逃避気味スタンスから思っちゃう事もやむなしのこの気温が原因であって片づけられないわけでもないのっ。草むしりと畑の水遣りやお祭りの準備に忙しいこの夏場に冷蔵庫が壊れたんだから仕方ないのよっ!


着々と常温に近づき続けて霜が結露となり雫が垂れ始めている大量の内容物を前に思う。


以前に冷蔵庫を買い替えた際に仕舞い込んで以来初の御開陳となる冷凍庫の中身。

扉を開いたまま目の前に屹立し運用上不経済な状態のままになっているこの壊れた冷蔵庫の冷凍庫のこの大きさにどれだけ詰め込んでいたのか、本当に入っていたのかと疑いたくなるけれど自分で取り出した大量のこれらを前に途方も無いと思っちゃう。


近所に住む娘たちや義理の姉や妹や従妹達に直ぐにでも頼みたくなるけれどこのアリサマはどうなのよっ!!未だ匂い始めてはいないしひんやり霜が付いて溶け始めてきてるんだけれど、まだやばい風味を出し始めてはいないこの台所を娘達が面白がって写真を撮られらしばらくは皆に弄られる事請け合いだし超かっちょわりー!!!

一応主婦をやってる訳だし娘達と呼んでいるけれど、他家に嫁いだり分家を継いだりして立派に齢を重ねている大人なんだけどね。私も同じ家に産まれたご同類で面白がるとタガが外れて度が過ぎる事もたまにある自覚が有って、家を継いだ娘としての矜持がこのひんやりした有様を放り出さずに躊躇しつつも努力の意を再認識しようとしているけれど挫けそうだわよう。


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