最恐モンスター②
9人で街を歩くのは大変なことだ。誰もが観賞魚を眺めるように僕達に目を向ける。見られることに慣れていれば良いのだろうが、僕にはそのての免疫が全くない。今までは寧ろ、目立たないように生きてきた訳だ。だから、9人で歩くのは本当に疲れる。
僕を除く8人を見た男という男の表情は、パッと花が咲いたように明るくなる。彼女を連れていても御構い無しに本能的に顔付きが変わるのだ。その気持ちは分からないでもない。この中の誰か1人であっても僕だってそんな反応をするのだろう。そのことに対して、僕がとやかく言うことではない。
しかし、その反動というのは必ずある。僕を見て、睨みつけるのだ。その目には、嫉妬よりも深い憎悪の光が宿っている。僕みたいな醜男が横にいるのはおかしい、不釣り合いだと訴える目だ。これはとっても恐ろしい。
そんなときに由依は敏感で、場を和ませるために周りの男達に愛想を振り撒く。男は単純だとつくづく思う瞬間だが、効果は覿面。続けてあゆみや優姫、奈江も行動してくれるので、最終的に人の怨みを買うことはなく、にこやかに通り過ぎてくれる。
だけど、並んで何かを待つ時は最悪だ。通り過ぎてくれることはないし、こちらも列を外れることが出来ない。由依達が愛想を振り撒けば振り撒くほど、男達の顔は崩れにやけていく。それが蓄積されていくので、反動というものが大きくなるのだ。本当に恐ろしい。
20分ほど前、僕達は地上にいた。そして、行列の一番後ろに並んだ。平日だというのに男女2人組のパーティーや、複数名の学生達のパーティーが長蛇の列を作り、僕達の前後に並ぶ。並び始めて5分もしないうちに異変が起きる。あちこちで男女のパーティーが解散し始めるのだ。由依達が男の視線を集め過ぎ、機嫌を悪くした女が解散を切り出す。男はその場を取り繕うが無駄で、多くのカップルと呼ばれるパーティーは忽ち解散となった。
そんなだから、行列の進むペースは早く、普段なら60分かかるところが、途中で離脱するパーティーがいるおかげで20分でモンスターと対峙することが出来た。行列に並ぶ時間が減ったのは良いことだが、離脱したパーティーの分まで頑張らないといけない。僕はそっと力を込めた。
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