死者を狩る者

大槻有哉

第1話 天才再動

僕はコジロー。自分で言うのもなんだが、天才だ。凄いものを生み出してしまった。進化だ。

この世界は、死者からデータを取ることにより、才能を奪う技術がある。殺し合いの世界。そして、この世界には二大勢力が存在する。ワとセイである。そして、他の勢力も沢山あり、そこに属する人々も多い。

人々は、才能を奪い、自らを守ろうとする。裏切りもある。もちろん、他人は信用出来ない。自らを最も優れていると言わんばかりに、過ぎたる力を求める者もいる。

ワは、聖母と呼ばれるマリアをリーダーとし、いわゆる死者狩りをしようとしない。主に、弱者の心の拠りどころである。戦力を持たないのは不安なのだが、マリアが強力な結界を張っている。争いはしない。

そして、もう一方の勢力セイは、サトルをリーダーとし、平和を求めている。セイは、力で支配し、平和を求める。

今、セイは最強の巨人キョウを止めようとしている。キョウは二大勢力以外に属し、その強大な力で今も死者狩りを行っている。ただ過ぎたる力だ。過ぎたる力はこの世を滅ぼす。

ところで、サトルとマリアと何らかの関係があるのだろうか?

僕は、その才能をセイにも狙われている。そして僕は今、ワの本拠地に向かっている。

僕は声をかける。

「行くぞー、コジ!」

コジは、僕が生み出した自慢のロボットである。コジは人が操縦するタイプである。僕は死者狩りがある限り、平和はないと考える。

コジは一対一の戦いには強いのだが。セイの軍団に囲まれる。僕は言う。

「進化だ、進化!」

セイの一班兵が言う。

「何だ、このリーチは! しかし剣とはな。囲んでしまえば……」

コジの刀は次々と形状を変え、広範囲を攻撃する。

セイの科学者カガクの声がする。声を通信で飛ばしている。カガクは言う。

「おまけの力があれば、進化と死者狩りの両方を得ることが出来る」

カガクは、巨人族に死者狩りされないようにロボットを作る。巨人族は、その他の勢力の中でも、高い力を持つ人種である。ロボットを作るのは、パイロットが脱出出来るからである。カガクが言う。

「この世界の理など下らない。しかし、利用してやる。ロボットで殺しても」

才能とロボットが強化される技術を持つ。

その時、一般人がセイのロボットに止めを刺す。一般兵が言う。

「脱出だ、逃げろ!」

一般人が言う。

「ちい、脱出能力も高いか」

一般人は、漁父之利を狙っていた。

ワの拠点に着いた。警戒する様子もなく、来ることが解っていたかのように、マリアが現れる。

「わたしに用ですか?」

「ああ、パイロットが欲しくてね。僕は死者狩りはしない。進化だ。その先に、死者狩りを超えるものがあると考える」

僕は孤立している。その他の勢力を信じる訳にはいかない。辺りを見回しながら僕は言う。

「適性のありそうなのは、こいつとこいつか」

一瞬で判断する。マリアが意外そうに言う。

「妹のマイコとイヌ?」

「マリア、お前も適性が有りそうだが、マイコというやつでいい」

マイコが言う。

「お姉様はここを動けませんからね」

マリアが言う。

「天才と名高い貴方なら、この世界を……。力を貸しましょう」

未来を見据えているようなヒトミだ。

イヌが自信無さげに話し出す。

「僕は下っ端で弱くて……」

「パイロットの素質はある」

僕は、二人を連れて棲みかへ帰る。イヌが言う。

「ロボットは何処に?」

僕は答える。

「意思を進化させ、ロボットを召喚する」

イヌは自信無さげに、

「僕には無理……」

と、言い出す。僕はそんなイヌに、

「イメージだよ、イメージ」

と、アドバイスする。

マイコは潔く、

「では」

と言いながら、イメージする。イメージしたロボットは、遠くからでも守れるように、弓を持っている。アーチャーだ。マイコは驚いて、

「弓を持っている」

と言う。

イヌはようやく、

「なら、僕も……。マリア様を、みんなを守りたい!」

と、祈る。ロボットが出てきた。しかし、一見特徴は無さそうに見える。

「やっぱり僕には……」

と、イヌ。しかし僕は言う。

「ガードか。やはり資質は有りそうだな。テストを行う。合体だ。二機まで」

マイコは尋ねる。

「何故? 三機は?」

僕は答える。

「科学には段階がある。進化にもな」

出来立ての弓をロボットアーチャーと、コジは合体する。マイコは不思議そうに、

「意思疎通が必要なんですか?」

と、尋ねる。僕は答える。

「いちいちうるさい! 何時か、人の心は進化によって共有出来る」

「……」

敵意を感じる。今は、良しとしよう。天才の崇高な考えが、理解出来ないのだろう。近距離と遠距離、両方の攻撃能力が合体出来た。

次は、アーチャーとガードが合体する。イヌは自信無さげに、

「何も起きていない気が……」

と言う。僕は、

「遠距離攻撃を前線で戦いを行いたい時にだ。後は想像出来るだろう」

と答える。

マイコが不意に僕に尋ねる。

「私達の目的は?」

僕は答える。

「現状維持だ。進化が追い付くまで。狩られる人を出来るだけ少なくする。そのため、僕達は戦場に行く」

三人で戦場に向かう。その途中、マイコはキッとした目で言う。

「貴方の意見が、全て正しいとは思えない」

僕は答える。

「そうか。まあ、セイが死者狩りで力をつけるのは、問題あるな」

イヌも続ける。

「セイは、仲間は狩らない思想らしいですけど」

セイの兵士が、一般人に手を出している。一般人は言う。

「もう少し努力すれば、ヤツを狩れたのに。まだ死ねない!」

マイコは、うつ向きながら言う。

「こんな考え方……。でも、今は戦います」

アーチャーは、弓で遠くの兵士のロボットを攻撃する。兵士は距離を詰める。ピンチだ。僕は指示を出す。

「イメージを進化させろ!」

「こう?」

マイコが試みる。イヌは二機を守る。弓の形状は次々と変化する。射程距離も変化する。僕が言う。

「エネルギーを使うぞ」

マイコが不思議そうに言う。

「こんなものが必要……」

僕は言う。

「撤退だ」

イヌが必死な顔をして言う。

「でも、まだ人々が襲われている」

僕は残念だが首を振る。三人は戻る。



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