世界の終わり

キツノ

僕は

僕は保健室でどうしようもなく寝ていた。

頭がズキズキと内部から傷んで眠れやしなかった。

カーテンでとざれた空間の中で、僕は外の音をずっと聞いていた。

「……そうねぇ、徐々にね?疲れたらいつだって休んでいいんだし……」

「はい」

「そう、ほんとに……」

保険の先生の少し曇った声と、女の子のスッとした声が聞こえてくる。

おそらく、女の子は引きこもりだった。学校に来れても教室に来れない子が僕のクラスにもいる。

「それじゃ、先生ちょっと用事があってね。ここ少し空けるから。うん。大体三十分くらいで帰ってくると思うけど……」

「……どうする?」

「待ちます」

「そう、じゃあえっと……」

先生の足音が近づく。カーテンがさっと開かれる。

「まだ気分悪い?」

「はい……まあ」

できれば起きて授業に出たいのだけれど。

「先生用事があってね。また気分良くなったら教室戻ってもいいから」

「はい」

「じゃあ、よろしくね」

カーテンは閉められ、足音は遠ざかり、ドアが開いて閉まった。

僕は真っ白な天井を見ながらしばらく沈黙の中にいた。女の子は物音もたてず、何をしているかわからない。

なんだか不思議な空間だ。なんというか。

「ねえ」

カーテンは開いていた。女の子が立っていた。背は少し小さかった。

「どうしてここにいるの?」

「僕が?」

「そう」

「頭が痛いからだよ」

「なんで?」

「わかんないけど、……うん、昨日いっぱい勉強したから疲れてたのかな」

「小学生なのに」

「勉強ができなきゃ、何もできないんだって」

「そうなの?」

「そう、たぶん」

女の子の首にはデフォルメされた蟹のペンダントがぶら下がっている。よくわからない趣味だ。

女の子はベッドに腰を下ろして、どこかを見ながら話しだす。

「この世界、嫌い?」

「へ?」

「人生、辛くない?」

「やめてくれ、カウンセラーじゃあるまいし。辛くないよ」

「でもさっき、勉強のせいで倒れたって」

「そんなことないって」

僕はベッドから起きた。もう頭痛はしていない。

「もう行くよ」

「わたしね、この世界を滅ぼそうと思っているの」

「何?」

「協力しようよ、世界のために」




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