挫折と成功



 *



 その後、普通に就職をしてOLになって働き始めるが、最初の失恋がきっかけで人との関わり方に苦戦することになる。


 距離を置けば付き合いが悪いと突き放され、近すぎる関係は恐怖でしかない。

 必然的に瑠美は、職場で浮いた存在になっていた。


 大学時代には考えられないほど、要領が悪くミスばかり。仕事を楽しむことが出来ない日々が続く。


 だからと言って改善出来るほどの器用さは持ち合わせていない。


 上司に嫌味を言われるのは日課になっていて、初めての部下はいつの間にか瑠美を抜いて上司になっていた。


 退職してほしいという空気が漂うそこに顔を出すだけで精一杯。


 必要とされていないことは苦しくて悲しい。それでも瑠美は立ち続けるしかなかった。


 そんな瑠美の生きがいは、やはり料理。趣味として作っていた瑠美だが、それだけでは物足りなくなった。


 そこでブログを始める。作った数だけブログを更新。写真と一緒にレシピを載せる。


 瑠美にとっては自分のためにしているただの日記。しかし、それが続けていくうちに閲覧人数が増え、コメントも書き込まれるようになった。


 顔のわからない、誰かもわからない人物からのコメントに瑠美は喜んだ。


 異性に凝った料理を作ると重すぎると言われるが、ブログでは違う。



『すごい!』

『美味しそう!』

『他のレシピも期待してます!』



 そんな称賛の声が癖になる。

 辞められないほどに楽しかった。作った分だけ褒めてもらえるなんて、現実ではなかったのだから。



 ブログを始めて二年。

 瑠美は思い切って仕事を辞めた。

 ブログと現実のギャップに、精神的にもたなくなっていたからだ。


 アルバイトをしながら、頭は料理のことばかり。ブログは五年以上続き、いつの間にか人気ブロガーとなっていた。


 そして激動の日々が始まる。


 出版社から書籍出版のオファーがきた。OLとして働いていた時の貯金もなくなり、これ以上フリーターは無理だと思っていた矢先のこと。


 ブログだけではなく、本になればもっとたくさんの人に見てもらえる。そう思うと嬉しくて、瑠美はますます料理が好きになった。


 そして書籍出版に打ち込み、レシピ本としても、エッセイとしても読める本が完成。それだけで満足だった。


 だが好調に売れたことで欲が出た。勢いで必要な資格を取り、小さなカフェをオープン。


 雑誌に載るほど話題になり、客足が途絶えることがない。

 瑠美はカフェ・ルミエールを成功させた。


 ただ、彼女は孤独を感じるようになる。

 何か満たされない気持ちを抱えて、カフェの仕事に打ち込んだ。


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