パズル6

1980年11月3日


ペルシャ語に訳すると「自らを燃やす」と言う意味の名前を持つ女性が、テヘランの夜空を感嘆の気持ちで見上げていた。


あらゆる方向から

無数の光の矢が流れ星のように真っ黒な空一面に描かれている。


「なんて、美しいんだろう」


地対空ミサイルがイラクの空軍機に向け一斉に発射されている。


「醜い戦争の実態とは裏腹に、

なんと美しい光景なのだろう」


「この世から、戦争がなくなることはないのだろうか」


神の名において、と言って戦争をしている国々を、なぜほったらかしにしている?

神は、存在するのか?


どこに?


スーと、みぞおちに降りてきた。

腑に落ちるとは、こういう時に使う言葉なのだろうか。


神は、ひとりひとりの

ここにいる。


そっと胸の真ん中に手を当てた。


地対空ミサイルでの迎撃は、終わっていた。


電気1つ点いてない暗闇の都市の空に

静かに、厳かに星々だけが輝いている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る