パズル2

2016年2月6日 未明


前日、70才の誕生日に皆で美味しいお酒を呑み、いい気持ちで休んでいたS氏は、大きな揺れと、物がバラバラと落ちる音を体全体で感じていた。

「夢か? 現実か?」

薄い意識が少しずつ濃くなっていく。

うっすらと、あの時の記憶が岸辺の波のように寄せてくる。


1999年の大地震は、震度7を超えていた。

あの時大師が言った言葉が

大師の姿とともに鮮やかに

閉じたままの瞼の内側に浮かんだ。


「彼ひとは、北から来る。いつ頃になるか、まだわからない。だか、この国を大災害から守る為、彼ひとは来る。そしてR寺に姿を現わすはず」


事前にいつ来られるのか分かるのでしょうか、と訊ねると


「メッセージが送られてくる。それを見逃さないように」


どうしたら、そのメッセージをキャッチできるか聞こうとして、すぐやめた。

きっと、わかるはずだ。

きっと、分かる形で送られてくる。


あれから17年近くが経った。

未だにメッセージすら受け取れずにいる。

本当に彼ひとは来るのだろうか。


最後に大師は、言った。

「彼ひとは、目覚めの時を待っている。まだ、準備が整っていない。そして、彼ひとをこちらに呼ぶために、やっておかなければならないことがある。それは、・・・」

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