れじに参るは馬鹿か阿呆か

St

01 カレー

昼下がりにすぅぱぁまぁけっとへと参内する。腹が減っては戦はできぬのだ。「勝てぬ戦はせぬ。」という先人の至言より、私はこれといって戦らしい戦をした事は無いのであるが、兎にも角にもまぁ腹が減ったのである。

惣菜売り場のはずれにぽつん、カレーがある。

「お、カレーかあ」カゴに入れる。

フラフラ歩くと足元に黄色い張り紙、本日レトルトカレーひとつ65円。

「お、カレーかあ」三つカゴに入れる。

朝ごはんもなくては困る、パン売り場へ。隅っこにぽつん、昔好きだったカレーパン。

「お、カレーかあ」カゴに入れる。

昼ごはんも買わなくちゃ、カップ麺売り場へ行く。新発売、カレー南蛮そば。

「お、カレーかあ」二つカゴに入れる。


これではカレーばかりではないか。ふふふ

それならば、それならば。


カゴにぶち込む、ジャガイモ玉ねぎ人参

そして

バーモントカレー、当然...辛口!!!

ついに参上、いつものレジへ。

私は店員の女の子の顔しか見ていない。

そして商品がレジを通るたびに彼女の肩が...震えていく...。


「あ、あの...お箸かスプーンはお付けいたしますか?」

「どちらも必要ないです。」

自分で言った直後に気づき、ついに小さく吹き出してしまう。

私は慌てて言葉を足した。

「あの...家ではちゃんとスプーン使いますよ?」

数秒経って合点のいった彼女もついに吹き出した。

「ふふふふふふ………、あ、すいません。」

初めて見た彼女の笑顔は、死ぬほど可愛かった。


このようにして非モテを健全に貫いてきた私は、いとも簡単に恋に落ちたのである。

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