無銘剣士の下克上〜初期装備でも学園最強になれます‼︎〜

秋山 連

1話 魔装学園

人類が魔法と出会い1世紀が経とうとしている。俺が知ってる魔法の歴史というのは簡単なことだけだが、最も初期の魔法では小さな火をおこしたり、植物の成長をほんの少し早めたり、

そんなことしか出来なかったらしい。

だが人類には知恵がある。人々は知識を集結させ、この100年足らずで魔法を超スピードで強化させた。

なんとロマン溢れる話だろうか! 今では殆どのエネルギーは魔法によってまかなわれているし、魔法技術の発達により魔法は学問の域にまで達している。

しかし、何かが発達するとそれを悪用しようとする輩が必ず出てくる。そんな魔法を利用した犯罪「魔法犯罪」の抑止力となるべく組織されたのが「魔装連合」である。彼らは魔法の知識や技術を学んだ超一流の魔法使いで、魔法犯罪から一般市民を守っている、いわば魔法を学び、志す者たちの憧れの存在だ。もちろんこの俺、櫻田悠(さくらだ ゆう)も魔法を学び、魔法連合に魅せられたうちの1人だ。いつかは魔法連合に所属することを夢見ている。


その夢の第一歩として俺は、魔法連合に所属する魔法使いを育成する、「国立魔装学園」への受験を決意した。中学では運動も勉強も、それなりにできていた。だが魔装学園入学への壁はそのくらいでは越えられない。

だから俺は毎日、血の滲むような努力をした。体力作りのために毎日走り込み、家に帰れば朝方まで勉強。そんな俺の努力を、神様は見ていてくれたのだろうか。俺はギリギリながらも受験に合格することができた。


そして迎えた入学式当日。昂ぶる心と裏腹に震える足をなんとか動かし、学園の校門に到着することができた。


式が終わると、この後生徒個人の何やら検査があるとのことだったので一旦、クラスごとに集まることになった。

俺の所属するクラスは、1-B。担任は

西ノ園先生というやや表情の固い黒髪の女性教師だ。体育館でタバコをふかしている。いいのか? 教職員として。


そんな西ノ園先生は、開口一番

「いいか。今からお前らには魔法使いの基礎となる魔装適正検査を受けてもらう」


クラス全体がザワザワし始める。当たり前だろう。魔装というのは、魔法使い達が、自らの魔法と組み合わせて使う武器のようなものである。魔装は簡単に一般人が手に入れることができる代物ではなく、魔装を所持していること自体がステータスなのだ。それを扱えるのだから、みんな嬉しいに違いない。


「適切な魔装の形状や能力は使用者の魔力の量、つまり生まれながらの才能によるものが大きい。よし、お前ら、各自これを持ってみろ」


そう言って全員に配られたのは、一振りの刀だった。刀といっても、鍔のような装飾された部分はなく刃の部分だけだった。


「先生…これは?」


生徒のうちの誰かが質問する。俺を含むみんな訳がわからないという様子だ。


だが西ノ園先生は顔色を変えず

「その刀は、学園側からお前らに支給された、いわば魔装の原型だ。その刀にそれぞれの魔力を加えることにより形状、能力が変化しする。つまりお前ら一人一人に一番扱いやすい、お前ら専用の魔装になるという訳だ。」


『うおぉぉぉ!! 』


クラス全員が狂喜する。もちろん俺も。その時、


「お前ら、静まれ‼︎」


西ノ園先生の一括で全員が瞬時に口を閉ざした。いや、正確には口が開かない。まるで唇同士を縫い付けられたかのようだ。


「次も同じことを繰り返すようなら鼻の穴も塞ぐぞ。わかったか? 」


皆無言で縦に首を振る。


「では、出席番号順に前にこい。まずは1番、有馬 幸貴(ありま こうき)出てこい」


「はいっ! 」


有馬という男の威勢のいい返事が体育館には響く。そいつは、俺と同い年とは思えないくらいガタイのいい奴だった。


「有馬、まずはその刀を構えて精神を集中させろ」


有馬は、先生の言うとおり両手で刀を握り、目を閉じた。


「魔力が高まってきたな。……よしっ今だ刀を振れ‼︎ 」


ギュイン‼︎


有馬の振った刀が風を切る。するとそれを振り下ろした瞬間、刀が眩く輝き始めた。そして光に包まれた刀は形状を変え、大きな斧になった。皆が唖然としてそれを見つめていると、先生が


「今見てもらったとおりの手順を踏んで今日中にお前らに合った魔装を各自用意してもらう。明日からは、実戦を想定した訓練も受けてもらうからな」


『うおぉぉぉ!!すげぇ!! 』


またしてもクラス全員が狂喜する。だが、今回は先生の言葉を思い出し、皆すぐに口を閉ざした。






「次、13番櫻田 悠出てこい」

「は、はい!」


ついに俺の番が回ってきた!

俺は内心穏やかではなかった。自分はいったいどんな魔装になるのか。そればかり考えていた。

(どんな魔装になるだろう…剣かな?いや、以外と飛び道具かもな)


「構えろ」


先生の指示に従って刀を構える。


「…振れ」


先生の声に勢いがないのが気になったが、俺はそのまま刀を振り下ろした。だが、


「え?」


刀は光りもしないし、なんの変化もない。俺が戸惑っていると先生が、ため息をつき言った。


「櫻田、こればかりは変えようがないんだ。仕方がない。」


俺はその意味が薄々わかっていたが受け入れることができなかった。


「どういうことですか!? 俺の魔装は? なんで光らないんですか、なんで…」


俺の発言をさえぎるように先生が冷たい目をして


「いいか櫻田、どうやらお前は生まれつき常人よりも魔力の量が先天的に少ないようだ。だから魔装を変化させる為の魔力が足りなかったんだ」


「そ、そんな…」


悲しみ、絶望、挫折、そんな言葉では表せない気持ちで頭が真っ白になった。クラスのみんなも気まずそうに俺を見つめている。


「うぅ…それじゃあ俺は…魔装を使えないのか…」


うなだれる俺を見て先生は、不思議そうな顔をして


「何を言っているんだ? お前に扱える魔装ならそこにあるだろ」


「え…?」


「お前が手に持っている刀だよ。それも無銘の刀ではあるが立派な魔装なんだぞ? 」


「でも、先生これは…」


「なんだ? 不満なのか? 」


先生は鋭い目付きで俺を睨んでくる。


「いえ、別に…」


「そうか、よし、次14番」








以上の経緯から俺はこの学園での生活を、拙い魔力と、恐らく史上最弱の支給品の魔装で送る羽目になってしまった。


だが、翌日の実戦訓練で俺の"最弱の魔装"は、意外な戦果を挙げることとなる。

















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