第2話 吾輩はキレイ好きである
我輩がお世話となるこの三河家は、ゴリラより恐ろしい母の〝
因みに家族の記憶にも残らない父親は出張とかで我輩自身一度も会っていない。
……事になっている。
昼寝を終え、陽だまりの中を散歩する我輩。
その前を突然現れた小汚い人間が遮った。
油臭くて小太りの醜い容姿が全ての生物をイラッとさせるその人物。
なにを隠そう近所にあるバイク屋の主人。
因みにバイクとは堕落人間が欲望を満たす為だけにある完全趣味の移動用機械。
生物もそんなに乗れないし、モノもあまり運べないといった実用性ゼロな代物。
なんともお粗末なカラクリだけど物好きな人間相手にそこそこ繁盛している。
その店を取り仕切っている、言わば社長的存在の彼。
名を〝ゴミ虫〟と言うらしい。
三河家の長男が家にいるときそう呼んでいるのを何度も耳にしたから間違いない。
「おーっ! ニャゴローじゃないか? 今日はどうしたんだ。ん?」
撫でようとするゴミ虫の手は、油まみれに汚れてドロッドロでしかもクサイ。
おかげで気高く美しい気品ある我が顔を汚された苦々しい過去の記憶が蘇る。
触られてたまるかバカモノめがっ!
その手から逃げるのは勿論の事、追ってこられないよう様々な妨害工作施す。
とりあえずはゴミ虫付近へ置かれた液体の入る容器を片っ端から転がしてやった。
見る見る青い顔となったゴミ虫は次々それらを拾いまくってゆく。
その姿はばら撒かれた餌に飛びつく野良犬にも見え、愉快愉快でああ愉快。
「うわっ! バカそれはっ!」
ガソリンがどうとかアルコールまでもとか我輩には一切関係のない事。
所詮は物扱いであるペットの悪戯となり、裁かれる心配もない。
例えそれが引火性の高い液体であっても。
偶然に店が火災となっても。
ここで一つだけハッキリ言いたいことがある。
我輩の肉球でマッチは引火できないから!
どこぞの古いアメリカカートゥーンに出てくる猫達とは違うから!
ダメ!
絶対にダメ!
とはいえ、ゴミ虫は嫌いでも、その娘や番いのメスは結構お気に入りな我輩。
特にあのふくよかな胸の腫れ物に抱かれるのは何とも言えぬ喜びが……。
思い立ったが吉日、直ぐに店の奥へその腫れ物を求めて上がり込む事としようか。
オマケで油まみれの肉球印を家中至る所に押してやろう。
ニャゴローは今日もいい仕事しています。
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