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 店員さんが持って来てくれたタオルでルカさんは濡れた髪を拭いた。一体どうしてこんなに濡れてしまったの? 傘はどうしたんだ。

「いやぁまさかこんなに降るとは思っていなくて」

「いやいや今日はずっと雨が降っていたじゃないですか」

「あ、いや、ほら、ちょっと前に雨脚が弱まった時があったでしょ? その時にもう止むのかなって油断したって言うか」

 そう言ってルカさんは呆れたように笑う。

 確かに一瞬雨脚は弱まったけどさ。その直後に一面が真っ白になるような雨が降ったじゃないの。

「傘は後輩の子に貸してしまっていて。俺は俺で仕事道具を持っていたから、とりあえず近くの店に避難したって感じで。その内後輩が迎えに来ます。それまでご一緒してもいいですか?」

「えぇもちろんですよ」

 仕事道具を持っていたからそれを庇って自分が濡れてしまったんだな。さすがルカさん。

「でもすみません、こんな見苦しい姿で」

「え。あぁお化粧ですか?」

 ルカさんの仕事は美容雑誌の編集者で、彼自身も美容男子だ。もちろん女性同様メイクもする。しかもそれが綺麗すぎて困るくらいの。

「はい、湿度も高いから崩れるのがいやでそんなに濃いメイクはしていなかったんですけど、濡れちゃったから結構取れちゃって。恥ずかしい」

「え、それで取れているんですか?」

 正直、俺には良く分からない。確かにアイメイクは薄いのかもしれないけど、肌の毛穴とかどこ行った? レベルだもん。店内の照明のせいとか、そういうこと?

「わ、あんまり見ないでください。本当に恥ずかしいから」

「いや、本当に大丈夫ですよ。いつも通り、とても綺麗ですから」

 いつもと違うとこと言えば髪色がピンクっぽくなったところと、照れて頬が赤いところだろうか。あまり照れたりしない人だから。

「うっ、そう言ってくれるのはマスターだけですよ」

「そんなことないでしょう?」

「いやいや、絶対後輩には笑われますからね。あぁ本当に災難でした。でも」

 ルカさんは照れた顔を隠すように覆っていた手を少しずらして視線を合わせて言った。

「でも、偶然にでもマスターに会えてよかったです。最近お店に行けてなかったから」

 ・・・ふぅ。そんな可愛いこと言われたらマスター困っちゃうな。

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