恵みの雨
カゲトモ
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うーん、まさかこんなに降るなんて。
目の前の窓の外は季節の花々が沢山植えられた花壇で、そこには恵みの雨とはもはや言えない位の雨が惜しげもなく降り注いでいる。逆にちょっと可哀相なくらいだ。せっかく咲いている花が倒れてしまいそう。
窓辺に座っていると言うこともあり、店内のBGMをすり抜けて聞こえてくる雨音と目の前の光景がこれが豪雨だと教えてくれる。とてもじゃないけど今は会計を済ませたくない。さっきスマホで確認したらこの雨はあと三十分くらいで止むらしいし、それまでは雨宿りさせてもらおう。あと一杯コーヒー頼むからさ。
「すみません、ブレンド、おかわりで」
俺よりもずいぶんと年下であろう店員さんがにっこりと微笑んで対応してくれる。今日は天気予報で前から酷い雨になると言っていたこともあって店内はとても静かだ。もともとあまり賑やかではない(流行っていない訳じゃない)お店だけど、今日は一段と静かだ。来店しているお客様が自分の世界に浸っているからかも知れないけれど。俺としては静かにコーヒーを楽しめるのは嬉しいし、丁寧に焼かれたクラシックなパンケーキを食べるのも恥ずかしくないからいい。
やっぱりいい歳の男が一人でパンケーキ頼むのってちょっと躊躇われるじゃん?
「お待たせいたしました」
ことん、と置かれた芳醇な香りを漂わせるカップ。パンケーキはバターとメープルがマスト。ブラックコーヒーと甘いパンケーキ、あぁ最高か。
ちりん。
フォークを口に付けたまま最高のハーモニーを味わっているとカフェの扉が開いた音が聞こえた。そこから雨音も流れ込んでくる。まだ雨は止みそうにないようだ。
まぁでも良い。コーヒーはまだまだ冷めないだろうから。
なんて一人の空間に想いを馳せていると、がたん、と隣で音がした。引かれたイスには誰かが腰かけたようだ。こんなに店内が空いているのに?
「おや」
「こんにちは」
いつもの様に柔らかな笑顔で挨拶をしてくれたのは、水も滴るイケメンだった。
「ルカさん、大丈夫ですか?」
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