第3話 清楚系エルフ

 深夜。

 カオルが眠りについたのを見計らって高級娼館へと向かった。

 店につくと、恰幅のよい店主が出迎えてくれた。


「ヒイロさま、これから私と一献いかがですか?」


 軽い世間話から、なんでだか一緒に酒を飲むことになった。

 落ち着いた雰囲気だけど、金がかかっていそうな部屋に案内される。

 侍女たちが料理を運ぶ中、ポツポツと会話しながら緩やな雰囲気で酒盛りを始めた。


「レム……ええっと、カオルは元気にやっておりますか? 迷惑をおかけしておりませんか? あの子は少し心が弱いところがありますから……ハハッ、ええ、私にとっては血の繋がっていない可愛い娘のようなものですよ。ええ、ヒイロさまの元で元気に暮らしてくれているなら……ハハッ」


 などという父親のような親愛の情と、カオルが子供の頃の思いで話をしみじみ聞かされると、ヤンチャな暴れん坊が切なさと愛しさにじわじわと沈下していく。


 ええ、はい……あいつが風邪をひいたとき、店主が一晩中つきっきりで看病したんですか……小さい頃は頻繁に病気になって……それは大変でしたね……え、全然大したことではない? いやいや立派なものですよ……。


 お父さんの愛情が本当に深くて重い……なんだか非常に気まずい。

 宿に戻ってカオルの寝顔を無性に見たくなった。

 そして、ごめんなさいと謝りたい気分だ。

 帰ろうかな……お土産にお菓子と花束を買っていこう……。


 ところがここで店主。


「最近店に入った者で、愉快・・すぎて客前にだすには少々問題な娘がいるのですが……ええ、根は真面目で見目は麗しいので、よろしければヒイロさま、お代は結構ですので彼女の修行にお付き合い頂けませんか?」


 そう発言しやがった。

 お父さん、あなたは俺に浮気を勧めたいのですか⁉

 カオルの、うつむいた悲しげな顔が心の中で浮かんだ。

 決意した俺は店主をキッとにらみつけ、そして、にっこり微笑んだ。


 ははっ、本当は嫌なんだけどさぁ、社会人として、こういう付き合いって本当に大切だから、嫌なんだけどさぁ本当はねぇ⁉


 そんな誰も聞いてない言い訳を心の中でしながら店主の提案を了承し、ドキドキして待っていると柱の影からソソッと現れたのは期待を裏切らぬ美少女だった。

 白のシンプルなロングドレスを身にまとう、娼館に不似合いと思える清楚なエルフであった。


「おお、中々……」


 魔王討伐の旅では男も女も綺麗どころが多く、というかご都合主義な感じで美形しかいなかったものだから、俺の美に対しての選定眼はかなり高いものになっている。

 え……うん、別に俺は面食いというわけじゃないよ?

 性格が合うかどうかの方が人間重要だと思っているからね?

 そう、顔じゃないんだよ、中身なのにちくしょう!!

 とまあ、そんな拗らせた俺ですら大称賛してしまう、少女の素晴らしい美貌を察してほしい。


 エルフの少女は俺を一瞥すると自分の腕を抱きしめて嘆くように呟いた。


「くっ、またこの身を売れというのですね……人族めっ、わたくしをどこまで愚弄し、辱めるつもりなのですか……!」


 凛とした佇まい、怯えをみせるも気丈に振る舞おうするエルフの少女。

 輝く金の髪に服の上からでも分かる女性らしい柔らかさを持つ体。

 気品漂うその姿は森の貴人と称されるだけはあって、ただただ美しい。

 そんな風に見惚れていると透明感のある美貌にキッと睨まれた。

 蒼眼には聡明そうな知性の光が見える……人としての確固とした芯もあるようだ。

 ふむ……気が強そうなことを除けば、なにも問題ないように思えるのだけど?


「わたくしの高貴なエルフボディに熱く滾る粘っこいパトスを余すところなくブッカケ、そのあとは卑猥な淫語をむりやり言わせながら、あらあらお姉さんが気持ちよすぎてもうだしちゃったのかな僕♪ なんて、ショタにアヘ顔ダブルピース騎乗をガンきめしている姿を、二人して酒のつまみにニヤニヤと眺めて楽しむつもりなんですね!? 人族めっ、なんと汚らわしい!!」


「………………」


 おい……どこの水〇敬だよ?


 店主にどうすればと、視線を投げると疲れた表情で首を振られた。

 ああそうか、見た目は良いけどやっぱり中身が愉快・・なのか……。

 それは高級娼婦として……いや人としても重大な問題だな。

 想像以上の愉快さに言葉もなく見守る俺と店主。


「くっ、そうですか、どうしてもというなら仕方ないですね……」


 俺たちの反応が宜しくないことに、ようやく気づいたらしい清楚系美少女エルフ。

 そこで普通に酌をしてくれるのと思いきや、壁に片手をつき足を大きく開いてスカートを腰まで捲りあげた。

 そして柔らかそうな尻たぶをキュッと締めつけてナニかをアピール。

 尻肉の谷間には清楚さの欠片もないアダルティな黒レースパンツが食い込んでいた。

 白い桃尻と黒パンのコントラストに、しなやかな長い足。

 非常にエロイが重度のビッチ臭がした。

 これで見た目が極上じゃなかったら普通にドン引き……いやごめん、美少女でも唐突に雰囲気もなく、こんなことやらかされると激しくドン引きだよ。


 例えイケメンでも公衆の面前で人間打楽器を始めたら嫌だろう? 


 君はもうちょっと場所と誘い方を考えて?

 見た目は良いんだから普通でいいんだよ普通で、男心は案外にデリケートなんだからさ?

 というか頼んでもないのに自分からケツ丸だしにしておいて、なんで私悔しいんですキッて感じで肩越しに睨んでくるの……なんで頬を染めているん、マゾなん?


「ですが、わたくしにもエルフの元女王・・・として矜持があります。そう易々とは屈しませんよ! さあさあ、わたくしを指名しなさいな、覚悟は完了済みです! 縄で縛る拘束から、大人のアイテム使っての特殊プレイまでなんでもござれ、そして三角木馬や壁尻や乳搾りなどの上級者プレイでも全然いけます! むしろどんとこいっ!!」


 清楚系ビッチエルフさんは「ヘイ、カモーン」とばかりに自分の尻たぶをペチンと叩いた。

 ペチン、ペチン、ペチンと素晴らしくいい音が鳴る……大味な洋物AVのノリであった。


 もう止めてくださいよ!

 ほら、店主さんも苦い物を食べてしまったような顔していますから‼

 というか初心者の俺には君は難易度が高すぎますハード痴女は無理ゲーです‼

 ノーマルな子で童貞卒業してレベル上げてから必ずご指名しますので今は許してください‼


 そんな何とも言えない睨みあいをしていたところ、突然エルフの美少女は目を丸くした。


「ん、んん!? って……あ、あなたは、もしやヒイロ……ヒデオですか!?」

「……また! その! パターンかよ!?」


 エルフの高級娼婦を身請けすることになった。

 漫研サークルの鬼畜系エロゲーマイスターのイズミ……そして現TS清楚系ビッチエルフが仲間に加わった。

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