第1話 序盤はスライムからがセオリーじゃ無いですか!?

「気をつけていくんだよ」


母さんの緑の目が僕を案じるように揺れる。


「いってらっしゃい、キンカお兄ちゃん!」


「ドラゴン倒してこいよー!!」


まだ幼い弟と妹が、無邪気な声で言う。


「みんなありがとう、じゃあ僕は行くね…また、みんなの元へ帰ってこれるよう頑張るから…!!」


僕は、これから砂漠を超え、首都のナージャマガルへ向かう。


首都からかなり離れたところにある僕らの村は貧しい。


その上働き手の父は五年前に死んでしまった。


つまり、僕が冒険者として出稼ぎに出るしかないのだ。


…もちろん、この村で働き手になる事も考えたけど冒険者になればもっと家族に裕福な暮らしをさせてあげられる。


僕が家族を楽にするためにがんばるんだ!!


地図はちょっと古いものしかないけど、モンスターの分布か変わることなんて100年単位でしか起こらないはずだし大丈夫のはず!


…そう思っていた頃が僕にもありました。


5時間後。


「人間に会うのは3日ぶりだなぁ…、前の奴らはつまらなかったから馬車ごと喰い散らかしちゃったけど今度のはまともなお話でも聞けるかねえ?」


強風とともに目の前に降り立ったのは、威風堂々とした砂漠の王だった。


「なぁ、お前さんは面白い話してくれるんだろ??まぁ、出来なかったら腹の足しにするだけだから緊張しなくてもいいぜ」


僕の何倍もある大きさの身体に付いた人間の顔は、好意的にニコリとしているがその目は捕食者のソレ。


しかも人間と同じなのは顔だけでその体躯は、肉食獣のような骨格で形成されており、全身にフサフサした毛も生えている。


みたことは無いけれど、僕は確実にこのモンスターを知っている…


「…スフィンクス」


「お、俺のこと知ってるんだな!俺は不夜のスフィンクスーーーーこの砂漠の主だぜ!」


…僕の冒険はどうやらここで終わってしまうらしい。

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