第1話 見知らぬ場所
「あれ?」
裕司達は気が付いたら知らない場所にいた。
溢れんばかりの花が咲き乱れる温室の中。
そこは、美しい植物が規則正しく並ぶ、庭園の様な場所だった。
裕司は少し前までは家の中にいたはずなのだが、気が付いたらこの温室の中へと移動していた。
「ここ、どこだろう」
首を傾げながら、周辺を歩きまわる。
温室の中は良い造芸士によって存分に手を尽くされて整備されているようだった。誰が見ても美しいと言えるほどに。
歩き回れば実際、綺麗な花々や草木があちらこちらで目を楽しませてくれる。
(すごく、綺麗なところだなぁ)
裕司は周囲を見まわし感嘆の息を漏らしながら、庭園の奥へと向って行く。
たどりついた奥には、小さなガラスの棺が置かれていたが、その棺の前には加奈という友達の少女が立っていた。
裕司と同い年の、よく見知った幼なじみの少女が。
「加奈ちゃんも、ここにいたんだ」
「裕司様も、ここにいらっしゃっていたんですわね」
お嬢様の家で、お嬢様らしく育った加奈は、丁寧な言葉遣いで喋る少女だ。
身に着ける服もそんな家柄を示す通り、可愛らしく質の良いものだ。
「うん、気が付いたら。ここにいたんだ。どうしてか、分かんないけど」
「わたくしも同じですわ。気が付いたらこの温室の中に立っていましたの」
「不思議だね」
「不思議ですわね」
そろってひとしきり首を傾げてみるが、答えは全くでない。
棺の方を見てみる。
その中には、綺麗な女性が入っていた。
「この人、眠ってるのかな。それとも……」
「棺の中に入っているのだから、お亡くなりになられた方なんでしょうか」
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