第14話

「大人があそこに近づくなと言ったわけが、ようやくわかったわ。あの辺では殺人事件なんて、いくらネットで探してもこれしか出てこんかった。あの地区ではこの事件は、タブー中のタブーやな」


「そうだったんやな……」


「そんで子供の右手首だけ見つからんかったって、書いとるやろ」


「書いとるけど」


としやは俺をじっと見つめると、いつになく真剣な眼差しで言った。


「おまえがいつも踏んどる目に見えない何かやけど、大きさとか感触とか、子供の右手首くらいなんとちゃう?」


「!」


俺は考えた。


あの大きさ、あの感触。


子供の右手首と言われたら、そうかもしれないと思う。


そうなると見つからなかったその右手を、俺はいつも踏んでいるということなのか。


俺が何も言わないでいると、としやが言った。


「まあ、それはひとまず置いといて、肝心な霊能者の話をしよ」


「えっ、見つかったんか?」


「昨日おまえが人里は慣れた山奥で修行しとるとか言うたとき、ちょっとびっくりしたわ。山、とくに大きい山には、まあ山によっては例外もあるけど、だいたいにおいて山は大きくて深いほど霊的なエネルギーがあるんやな。富士山が日本一の霊峰とか言われてるんも、そういったわけやな」


「……それで」


「だから大きくて深い山があるところには、歴史的にみても徳の高い霊能者がいる場合が多い。例外もたくさんあるけど。親に内緒で中学生がそんな人に会おうと思たら、やっぱり近場でないとな。大きくて深い山がたくさんあるといえばここから近いのは、広島県と高知県やな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る