第3話
中学に入ってから、雨の日などに田んぼを見に行かされるようになった。
それまではずっと父が見に行っていたものだが。
中学生にもなれば、自らの身を進んで危険にさらすことはないだろうと言う両親の判断からだ。
俺も最初は「おおっ、大人扱いされるようになったんだな」と喜んで行ったものだが、そんなものはせいぜい最初の二回ぐらいで、その後はただただ面倒くさいだけだった。
でも断るとあとがとんでもなくうるさくなることはわかっていたので、「うん」と二つ返事で見に行くのが常だ。
それにしても俺が中学生になってから二年と四ヶ月ほど経つが、その間大雨が降る日が例年よりも多かった。
香川県はそんなに雨の降る県ではなかったはずだが。
合羽を着て、大型の懐中電灯を手にして、自転車に乗った。
雨はひどいが風がないのは幸いだ。
風が強いと自転車では危ないので、田んぼまでのけっこうな距離を歩かなければならないのだ。
叩きつける雨に対して恨み言を呟きながら自転車をこいでいると、例の空き家が目に入った。
その家を見たときに、俺の頭にある考えが浮かんできた。
今なら行けるのではないか、と。
なにせこの雨だ。
車は時折通るが、少なくとも畑仕事をしている人など一人もいない。
田んぼの主である叔父さんと近所の人も、先ほど田んぼの視察は終えている。
今から田んぼを見に行くと、うちに報告しに来たからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます