第3話 装置の仕様
忠義との会話の後、瑠璃は職員室に向かった。目的は、大崎先生だ。
先生も瑠璃の意図をわかっていたらしく、また人気のないところに連れ出された。
「今日は何だい? もしかして、やめたいのか?」
「ち、違いますよ! 全然」
「じゃあ何か問題でも?」
「はい。前から疑問に思っていたんですけど。あのインカム…」
「装置が、どうした?」
「スイッチ押すと強制的に目覚めるじゃないですか? その使用、どうにかなりませんか? 一々外してからまた寝るの、ちょっと手間なんです…」
先生の表情が和らいだ。瑠璃がそんなこと言ってくるなんて思っていなかったのだろう。もっと重大な話だと思っていたはずだ。
「そんなこと、どうでもいいだろ。そんな文句言ってきたの、二か月間でお前だけだぞ?」
「それは、そうですけど、でも…。毎回毎回気になっちゃって。特に朝が近い時間に起こされると、もう一度寝ることもできないんです…」
「…言われてみれば、そうだな」
「でしょう先生!」
先生だってそう思うのなら、改良してくれる! 瑠璃は淡い期待を寄せた。
「でも、今から改造するのは時間がない。紗夜たちだってできれば人員を増やしたいって言ってるんだ。俺一人で装置を作るの、大変なんだぞ? 金も時間も必要だからな」
「それは、わかりますけど…」
「だから、お前の話は、わかるが、改造はなしだ」
「そ、そんな…」
「よく考えてみ? 装置の数が増えれば人員も増える。そうすれば悪夢も早く討伐できるはずだ。またそうすれば?」
「早く起きられる、ですか?」
「そうだ。早くに目覚めれば、また寝る時間も早くなる。いいことじゃないか」
「で、でも…」
「後な、これは技術的な問題じゃないんだが…。お前の言うように、目覚めないようにするってことは、人の夢から自分の夢に帰るってことだろ? もしその時に悪夢まで引っ張ってきたら、どうする? 面倒なことが増えちまう」
確かにそうだ、と瑠璃は頷いた。
「お前の言いたいことはわかる。だが研究者にならず、教師になった俺にはもう、これ以上の技術の進歩はできないんだ。今の俺にできるのは、大学時代に作った装置を真似ることだけなんだ」
「そう、ですか…」
「一応、大学時代の仲間で大学院に進んだ奴がいるから、お前の意見は言ってはみる。でも期待するなよ? 何せ夢から夢へ飛ぶのは、前例がない。技術もないかもしれない」
「…わかりました」
瑠璃の訴えが退けられた瞬間だった。
「がっかりするな。俺たちの代わりに悪夢と戦ってくれているのは感謝する。将来の決まってしまった俺にはもう、装置は使えない。これからも、頑張ってくれ!」
「それは、わかってます」
「あと、怪我だけはしないでくれよ?」
二人の会話はそれで終わり、それぞれ教室と職員室に戻って行った。
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