第6話 リベンジ
ベッドに入る。まだ璃緒が起きているらしく、上から光が漏れている。いつもなら注意して消させるが、別に今日はいい。
瑠璃はインカムをつけて、眠った。
ここに来るのは三回目だ。この暗闇も、もう慣れた。このどこかに悪夢がいるんでしょう?
「ああっ、瑠璃じゃねえか! どうしてここに!」
後ろで慎治の声がした。
「お前、やめるんだろ? 何でここにいるんだよ?」
「私は、やめない」
瑠璃の言葉に慎治は驚きはしたが、
「そうか、やっぱりお前はそうだよな。昔からそういう奴だもんな」
慎治もどこかで自分が来てくれると思っていたんだ。忠義の言葉は嘘ではなかった。
「やっぱり来てくれたんだね!」
声の方を振り向くと忠義がいた。彼は嬉しそうに、
「ほら、やっぱり僕の言った通りじゃん! 瑠璃は来てくれたでしょ!」
と言った。
「さあて、まーた紗夜を待つかぁ。あいつ本当に睡眠薬必要なんじゃねえか?」
「でもあれってさ、ドラマみたいに飲んだら即効なの? すぐに寝ついちゃうの?」
「さあ。飲んだことねえからわかんねえな。後で親父に聞いとくぜ!」
そんな会話をしていると、紗夜が目の前に現れた。
「る、瑠璃! どうして?」
紗夜は目の前のものが何か、理解できていないって感じの顔だ。
「紗夜、私戦うよ! 決めたの。もう逃げないって。討伐に全力で取り組むって!」
瑠璃の決意は固い。それは、紗夜もわかっている。
紗夜は残念そうに、
「そう…。なら、しかたない…」
とだけ言った。思えば私が一番危険な目にあって欲しくないと思っているのは紗夜だ。彼女のそっちの期待には応えられないけど、力にはなって見せる!
例のごとく紗夜はコンパスを取り出し、矢印の方向を確認した。今度は右だ。
「今日の獲物は何だぁ? オレが全部やっつけてやるぜ!」
右手に握った剣を掲げて慎治が叫んだ。
瑠璃も、そのつもりだ。妖刀ヤタガラスを、いつでも鞘から抜ける状態にしておく。剣術なんて学んだことはないけど、瑠璃流の構えだ。
忠義は相変わらずマシンガンだが、紗夜は弓矢だった。昨日の悪夢で、槍はタコには効果が薄かったのだろう。二人とも、いつでも撃てるよう構えている。
やがてそれは見えてきた。男性が一人、沢山の鳥たちと戯れている。いや、襲われている。今日の悪夢は鳥だ。
「待ってよ、慎治。いつも君が突っ込むから、僕が撃てなくなるんだ。今日は少しは我慢してよ?」
「あのおっさんには当てんなよ?」
「大丈夫。君と違って考えてるから」
忠義は弾丸を一発だけ、鳥たちに向かって撃った。すると鳥たちは一斉に舞い上がる。当然、男性からは離れるわけだ。鳥の中には鶏やダチョウ、ペンギンもいるらしく、飛んでないのもいた。
「ほらね。これなら、当たる心配はないよ! 慎治たちは、飛べないのをお願いね」
そう言うと、飛んでいる鳥に向かってマシンガンを撃ちまくる。忠義は狙って撃っているようには見えないが、鳥たちが多すぎるので適当に撃っても当たっているのだ。
一方、飛べない鶏たちが四人の方へ走ってくる。
ペンギンの歩き方はよくかわいいって言われる。水族館に行くと、それがよく見える。
でも紗夜は容赦がなかった。彼女が放った矢は、ペンギンの胸を射抜いた。横の他のペンギンや、鶏でさえも、紗夜は正確に射抜く。紗夜って、弓道部だっけ?
突然、ダチョウが走り出した。その速さは時速七十キロメートルとも言われている。
「くっ…!」
紗夜が声を漏らした。ダチョウが、矢を避けたからだ。次もその次も、余裕で避ける。
ダチョウは左に大回りして、瑠璃たちの方へ向かってくる。そして瑠璃に狙いを定めて、突っ込んでくる。
「逃げろ、瑠璃ぃ! ここはオレに任せろ!」
「瑠璃、スイッチを…!」
二人の声は瑠璃には届いていない。
刀を鞘から抜くのと、刀を振るのはほぼ同時だった。
一瞬紗夜と慎治は、何が起きたかわかっていなかった。ただ、二人の目の前には、ぶった切られたダチョウの体が、二つ、転がっていた。
「言ったでしょう? 紗夜、慎治。私は、戦うって」
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