第46話 ルミと先生(1)

ルミ「先生、こんな事質問しても、変に思わないで訊いてほしいんですが・・・

いいですか?」

イングリッド「そーねー・・・ 答えられる範囲ならいいわよー。」

ルミ「この部屋、あたしと先生以外・・・何かいます?」

イングリッド「ええー!なんでー!?」

ルミ「ここの所・・・人々のざわめきとか、話し声が聞こえる・・・ 聞こえるんですけど、音じゃないんです! なんて言うか・・・夢の中での会話みたいな・・

文章の意味が直接変換されて、頭に入ってくる感じ・・・なんです。」


イングリッドは心当たりがあると同時に、手応えも感じていた。


ルミ「言葉自体は、たいしたこと言ってないんです。せいぜい・・・」

イングリッド「ええー、どんな感じ?」

ルミ「がんばれーとか、応援してるぞーとか・・・」

イングリッド「あらまー・・・ ひょっとして気に入られちゃったのかしらー?

ユーレイさんとか、セーレイさんとかに・・・」

ルミ「やめてください! ・・・!!」

イングリッド「ほらー、安静にしてなきゃダメでしょー?」

ルミ「・・・とにかく、ありがた迷惑・・・です!」


あらぬ方向を見ながら苦笑するイングリッド。


ほとんど音のしない部屋。

窓も無く、外の様子だけでなく、時計も無いため、昼か夜かも分からない。


ルミ「・・・先生、ここ・・・どこなんです?」

イングリッド「そーねー、なんて言えばいいかしら・・・私専用の核シェルター

みたいな所・・・かな。」


二人の会話が途切れると、この部屋はすぐに異様な静けさを取り戻す。


ルミ「先生、やっぱり外部から情報が入ってこないと、精神的にキツイです。」

イングリッド「ああ・・・そっかあ~ 確かにそうよねー。 でも、あたしと

してはルミちゃんにじっくり静養してほしかったんだけど・・・やっぱキツイ?」

ルミ「キツイです!」

イングリッド「でも、これ見せちゃったら、ショックでトラウマに・・・」

ルミ「そうなるか、ならないかは、私が判断します!」

イングリッド「もー、わかりましたー! ちょっとまって。」


そう言って、奥の部屋からタブレット端末を持ってきたイングリッド。


イングリッド「ここは電波が完全に遮断されてるから、情報が少し古いままで

更新されてないんだけど・・・」

ルミ「どれくらい日数が経っているんですか?」

イングリッド「ルミちゃんを運び入れてから外に出てないので・・・

そうね・・・ 一週間ぐらいかな。」

ルミ「そんなに経ってたんですか!?」

イングリッド「ルミちゃん、三日間昏睡状態だったの。」

ルミ「・・・・・・」

イングリッド「どうする? 見る?」

ルミ「・・・見せてください。」


新国連のTEAMに加盟している団体(チーム)名簿の中に、〝ROOKIES〟という

欄があり、発足して間もないチームがいくつか記載されていた。

その中に・・・

MOTOI-CREW の名前。


・MEMBER・

KEN・MOTOI Reader

TINA・PUENTE

MINAKO・SUDA


実績と担当監査官の欄は空白になっていた。


イングリッド「社長さんの他に、知ってる人・・・いるわよね?」

ルミ「はい。 先生もよく御存知の人ですね。」


二人の間に数秒間ほど、沈黙の間があった。





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