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「それでそれで、浩太郎さん。凄いことっていったい何なんですか?」
キッと蘭子さんに睨まれつつも好奇心は抑えられない。だって、長年片想いしてきた彼の家にご飯を作りに行っているだなんて! 半年くらい前の蘭子さんなら考えられなかったことだよ? ごめん、言い過ぎた?
「蘭子がね、最近オレの為にご飯を作りに来てくれているんですよ。あんなに料理が下手くそだったのに」
「下手じゃなかったわよ! ただ作らなかったってだけで」
いや、それはもう上手いとか下手とかの話じゃないし。料理できないって言ってたし。
「最初はね、本当に驚いたんですけど、オレが残業で遅くなるって言っていたら、家でご飯を用意してくれていて。なんか前に失くした鍵を蘭子が持ってくれていたみたいなんですけど、なんか凄く嬉しくて。それから何回も作りに来てくれているんですよ。凄いでしょ? あの蘭子が」
「どういう意味よ」
「キラキラして自分一人で立っているって感じの蘭子が、オレの為にご飯を作ってくれるなんて凄いなって話」
まぁ、そりゃぁ長年浩太郎さんのことしか見ていなかったしね。喜んでくれるなら料理くらい練習するよね?
「やっぱり慕われる社長は違うよ。ちゃんと他の人のことも気遣えるってのはさすがだよね」
あ、違う、そうじゃない。
蘭子さんは恨めしそうに浩太郎さんの事を上目づかいで見つめてから「お手洗いっ」とだけ残して席を立った。
うんうん、頑張ってよ蘭子さん。俺が言うのもなんだけどさ、浩太郎はこれがデフォだろ。
「蘭子さんのお料理はいかがですか?」
素直すぎる浩太郎さんだから、はっきりと『いや凄く不味くて』なんて言っちゃうか?
「んー、美味しくはないです」
うん、まぁ料理初心者が最初から美味しい料理を作れはしないよね。
「でも、良いですよ」
「良い?」
「なんだかあったかくて。あ、鍋料理とかそう言うのじゃなくてですよ。仕事で疲れて帰って来たら、頑張って作ってくれたご飯が置いてあるのって、なんかあたたかいです」
そういって素直に笑顔を見せる。あぁその後に「本当にありがたいですよ」なんて言葉が続かなかったら、すごくラブラブに見えたのに。浩太郎さんにとってはまだ蘭子さんはただの幼馴染、なのかな?
頑張れ、蘭子さん。
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