第6話 放課後デート。

 今日の授業はこれで終わりだった。


 帰りのホームルームをすませ、足早に帰ろうとするクラスメイト達に後れをとらないように急いで教室を出た。



 放課後の教室というのも青春っぽさがあるが、それよりも友人達との寄り道に興味があった。


 雨とは言え、午前中で学校が終わる今日は、寄り道をするのに絶好の機会だ。



 しかし、リア充達の近くにいたら寄り道に誘われるのではないか。

 そんな他人任せの作戦も空振りに終わり、今は独り下駄箱の前にいた。


 今日はもう帰って寝よう。

 そう思い下駄箱を開けると、そこには1通の手紙が入っていた。


 驚きと緊張のせいか、震える手で掴んだその手紙は、どうやらラブレターのようだった。



 きたこれ。


 早々と内容を確認する。

「あなたことが好きです!付き合ってください!!」と書いてあった。他人宛で。



 春は出会いの季節。まさにその通りだ。


 間違いだとしても、これも何かの縁。


 桜が雨で散ったとしても、この子の恋だけは咲かせてあげよう。



 早速、正しい宛先に届けようと周りを見てみると、すぐに見つかった。自分の隣の下駄箱だった。


 誰かに見られないようにこっそりと入れる。


 自分宛でなかったことは残念だが、良いことをしたのですごく気分が良かった。



 外に出ると、雨は止んでいた。


 やはり、良いことをすると良いことがあるものだな。と、さらに気分が良くなった。


 また雨が降りだす前に帰ろう。

 そうして学校を後にし、家路についた。



 ある程度歩くと、少し前の方に1人の女の子がいることに気づく。


 後ろ姿しか見えないので、誰なのかもわからなかったが、遠くもなく近くもない距離のまま歩き続けていると、なんだか一緒に下校しているような気になった。


 顔も名前も知らない人と会話もない下校デート。ありかもしれない。



 そんなことを考えていると、彼女は右へと曲がって行ってしまった。


 自分の家への道は左なのでここでお別れだ。

 またね。と心のなかで別れを告げ彼女とは反対の方へと向かって歩いた。



 とても気持ちの良い下校の時間だったと思った。

 ただ、こんなことを気持ち良いと思える自分が気持ち悪かった。

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