昔話


むかしむかし

あるところに

おじいさんと

おばあさんが住んでいました

おじいさんは

山へ芝刈りに

おばあさんは

川へ洗濯に出掛けました

おばあさんがおもらししたおじいさんのパンツを嫌々、洗っていると

川の上流から

どんぶらこ

どんぶらこ

大きな桃が流れてきました

おばあさんはそれを持ち帰ると包丁で真っ二つに切ろうとしました

しかし途中で刃が止まってしまって動きませんでした

(………種かな?)

おばあさんはそう思いました

すると切れ目から真剣白刃取りをした赤ん坊が出てきました

赤ん坊は言いました

「ふぅー危ない危ない、よくあるパターンなんだよ、かぐや姫もこれで死にかけたんだ」

そのようなことを言うと、黙り

おばあさんが何か、そう

「桃から生まれた桃太郎!」

と言うのをじっと待っていました

けれどおばあさんはいつまで経っても阿呆みたいにただ口を開けそこに突っ立っているだけでした

仕方が無いので桃太郎(まだ名付けられていない)は素っ裸のままただそこにいるだけでした

寒いと思いました

おばあさんは

家の三分の一ほどを占める巨大な桃を処理するために

いそいそと食べ始めました

甘みが無く

とても不快な酸味のみが口中に広がりました

おばあさんは赤ん坊に言いました

「あんた………一体、何処の子だい? こんな桃の中に閉じ込められて息が苦しくなかったかい?」

どうやら虐待か何かと勘違いしているようでした

桃太郎(まだ名付けられていない)は言いました

「ねえ、そんなことはどうでもいいからさ、それより最近の鬼が島はどうなの? 相変わらず治安は悪いのかな?」

おばあさんは

目の前の裸の赤ん坊が滑舌よく喋り始めたので

(きっとこの子はIQが高いに違いない)

と思いました

とても優しい口調で言いました

「鬼が島………一体それはなんだい?」

それを聞いて桃太郎(まだ名付けられていない)は自分が置かれた状況に心底うんざりしました

(この老婆は痴呆だ)

そして………

そしておじいさんは何処だ?

桃太郎(まだ名付けられていない)は辺りを見回しました

その頃

山へ芝刈りに出掛けたおじいさんは

現れた巨大熊に襲われ

命からがら地元の猟友会に連絡をしていました

ひいひいと言いながら血を流し転がるように下山するおじいさん

けれどその話は省略しましょう

何故なら物語の本筋とは全然、関係無いからです


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