俺だってコンビニぐらい行ける!

雪下淡花

プロローグ

 それは、ある日の出来事。

 もしかしたらたった一日のうちに起きた一連の出来事だったかもしれないし、それぞれの出来事がまったく別の日に起きたことかもしれない。

 しかしそれらに共通して言えることは一つ。

 俺はコンビニに行こうとした。それだけ。

 でも、ちょっとばかり障害物が多過ぎた。

 これは、幾多の障害物を乗り越えてヒキコモリの俺がコンビニに辿り着く道程の物語である。



 俺がナワバリにしている場所は実家の2階の子ども部屋で、窓が東向きについている。

 そのせいで朝ともなれば直射日光が容赦なくボロいカーテンの隙間から入りこんで来る。

 そして夜更けまで遊んでいた俺のただれた体内時計を強制再起動しにかかってくるのだ。

 やめてくれ。俺はいまスリープモードなんだ……。


 布団の中に潜り込んで太陽から逃げた俺だったが、その事でふつふつと怒りが込み上げてきた。

 いい歳こいて引き籠っている自分自身への怒りだったかもしれない。

 なんで遥か遠くの太陽なんかに叩き起こさないといけないんだと言う怒りだったかもしれない。

 引き籠って何が悪い。

 俺だってその気になればコンビニぐらいなら行けるんだ。


 そう、俺だって太陽の光が降り注ぐ中で街を歩き、颯爽と買い物を済ませ、まだ陽のあるうちに家に帰ることができるのだ。

 俺は縋りついてくる布団にささやかな別れを告げ、必ず帰ってくると約束をした。

 さぁ、行こう。



「俺だってコンビニぐらい行ける!」

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