第56話「私はショタコンじゃない」
後ろでクラークが吹き出した。くっそぅ、笑われた。
「天使のように愛らしい君、どうか私とお茶してくれないかい?」
「あの、えっと……ぅぅ」
何を言うとる私。
くっくっ、と笑いを噛み殺すクラーク。
「ディナーでもどうだい?」
まだ昼にもなってねぇよ。
「そのもふもふの耳可愛い。抱き締めたい」
変態か。
己のアホ発言に内心自分で突っ込む。すでにクラークが腹抱えて爆笑していた。
駄目だ。会話しようとすればするほど言葉が出てこなくて変なことを口走る。私の口よ止まれ。
焦って何か言おうとしては口をつぐむ私を見て、それまで怯えた表情をしてた銀髪タレ耳ウサギ少年がくすっと小さく笑った。
口元を両手で隠してるから笑った顔は見れなかったが、表情が柔らかいものになっている。
うう……子供にまで笑われた……
がっくりと項垂れて頭をがっしがっしと掻き乱す。
「あー………その、私は……姓は綾瀬、名は実里、デス。あなたの名前は?」
おずおずと顔を上げ、照れてるのか恥ずかしがってるのか若干頬を赤く染めて深紅の瞳に私を映した。
「……く、クリストファー……。みんな、クリスって呼ぶ」
「そっか。じゃあクリス、これからよろしく」
すっと右手を差し出せば、私の顔と手を交互に見て、若干震える手で小さく握ってくれた。なんだ、はじめからこうすれば良かったな。
「よ、ろしく……みっちゃん」
やばいキュンときた。
みっちゃんって。みっちゃんって……!
悶えそうになるのを懸命に堪え、ぎゅっと握り返した。
まさか私幼児に弱いのか?それともこの子が天使みたいに可愛いからか?私の心臓が暴れまくってるんだけど。さっきとは違う意味でどうしよう。
「ミノリちゃん、早くもクリスの可愛さにノックアウトされたねー。超ウケるー」
「……うるさい」
クラークがからかってきたので一睨みしておく。目に涙溜めるほど笑いやがったのかこいつ。目潰しすんぞ。
「みっちゃん、怖い……」
弱々しい声にハッとした。
クリスの怯えた顔を見て笑顔の仮面を被り怖くないよアピール。
再びクラークが可笑しそうに笑っているが無視。こんないたいけで可憐な少年を怖がらせてはいけないという自分でもよく分からない正義感が私をそうさせた。
「みのりーん!あ、クリスもいるにゃ!ちょうど良かった、一緒にあっそぼー!」
割り込むのがお得意なチェルシーが私とクリスの手を強引に引っ張っていく。クラークが「いってらー」と楽しげに手を振っているのが視界の端で見えた。
いきなりの展開にキョドるクリスだが、嬉しそうに微笑した。
その日からクリスも加わり、三人で遊ぶ毎日。
主にチェルシーに引っ張られては悪戯を傍観してるだけだが。クリスははじめこそキョドるだけだったが少しずつ頑張って話しかけてくれる。
二人してチェルシーに振り回される日々。
めんどくさいし、相変わらず眠いし、私を巻き込むなって思う気持ちは変わらないけど、心の底から嫌な訳ではない。
けどある日。突然のことだった。
急速に睡眠時間がかなり削られた私の身体はどうやら自分でも気付かないうちに負担がかかっていたようだ。
「みのりんっ!?」
「みっちゃんっ!!」
今日は何をして遊ぼうか、とチェルシーとクリスが楽しそうに会話してるときのこと。
私は見事にぶっ倒れた。
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