第28話「愛しの世界へ」

あ、また眠くなってきた。


アレンの声が子守唄になってるっぽい。めちゃ眠い。


ううむ……どうにかこのまま寝られないだろうか……睡魔と戦わない方法……そのまま夢の世界へ旅立てる方法……


「実は、ノ……国……の…………」


ああ、アレンの声が遠くに聞こえる。


寝ていいよって言われたら、いや言われなくても今すぐパラダイスへいける。


ああ……腕の中に納まってる枕之助が誘惑してくる。「ほら、何モタモタしてんの。早く寝ちゃいなさいヨ」って幻聴が聞こえる。「睡魔と戦っちゃ駄目よ実里。流れに身を任せてドリームランドにGOしちゃいなさい」とまで聞こえてくる。


GOしちゃっていいかな。いいかな?


いいよね。


という訳でおやすみなさい。



……が、しかし。昨日から幾度となく私の幸せタイムを邪魔するやつが目の前にいることを忘れていた。


「おいこら怠け者。ぐうたら寝るのも大概にしろ!」


チッ。またか。


この野郎、何度私のスリーピングタイムを妨害すれば気が済むんだ。全くもってけしからん。


いい加減腹立ってきた。久々に人と話したからなのか、ちょっとくらい向こうの話に付き合ってやるかって考えてたけど止めだ止め。


こんなんじゃあ私の生活が乱れてしまう。そもそもが乱れまくってるけどそれが私にとっての日常だ。


それをなんなんだ、この男は。毎度起こしてくるわ説教かますわ飯作るわ、飯だけは感謝してるが他はいらん。


あれか。あんたはお母さんにでもなりたいのか。規則正しい生活をしなさい!とでも言いたいのか。真っ平御免だね。


アレンは知らないんだ。日光が入らないようびっちり締め切ったカーテンのおかげで薄暗い部屋の中、程よく乱れたベッドに大の字で寝転がるあの爽快な幸せ気分を。だから邪魔ばかりするに違いない。


アレンもこの幸せを噛み締めたらきっとそんな非道な行為はしなくなるはずだ。


ならば味わうがいい。


「アレン」


「あ?」


「一緒に寝よう」


「………………………………は?」


君にも理解してほしい。


寝ることがどれほど素晴らしい行為か。

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