第27話「それぞれの国」
「ここから一番近い国はノクト国だ。北に真っ直ぐ行ったとこにある。馬を使って2日、ドラゴンや鳥でも半日かかるがな」
「ここ、どんだけ辺境の地なの」
思わず突っ込む。
突っ込みたくもなるわ。んな時間かかるっていったいここから何㎞距離があるのさ、そのノクト国とやら。しかもそれで一番近いとか。車とか電車とかは……あ、ここ科学が発達してないんだ。だから移動手段が馬な訳ね。
「アレンは役人でしょ?国に行ったりするんじゃない?」
「ああ、しょっちゅうあるぞ」
大変だね。この世界も科学技術が進歩すればいずれは便利道具も増えて移動手段も増えるのに。
「ノクト国の隣にはアーウィン国があるが、あそこは能力を持たないやつを忌み嫌う国で有名だからお前は近づかない方がいい」
「ほーい」
頼まれても行かないよ。そんな遠い場所。
「次に、南の方角にはべリア王国がある。途中で山を何度か越えて海も渡らなきゃいけないがな。最低でも1ヶ月かかる」
「うへぇ……」
と、そこまで話を聞いてたところでクラークが掃除用具を持って戻ってきた。
「お待たせー。はいアレン」
「おう」
箒とちりとりをクラークから手渡され、せっせかと皿の破片を片付けるアレン。ゴミ箱は部屋の隅にあることを告げると皿の破片が入った小さな袋を捨てに行った。
クラークは元の席に戻るかと思いきや私の目前に置かれている皿を重ね、部屋を出て行った。あれクラークの家のものらしいから自分の家に持って帰ったのかな。
ゴミを捨てて戻ってきたアレンはクラークが座っていた席に座る。つまり私の目の前の席。
「べリア王国はアーウィン国のような差別国家じゃないが、なんというか……その、変人が多い国というか……とにかく変わってる国だ。ノクト国とアーウィン国よりもずっとずっと大きい国でも有名だな。迷子になりやすいから注意が必要だ」
「へーい」
そっちも頼まれても行かないね。1ヶ月もかかるなんて拷問だ。睡眠時間を削ってまで行く理由がない。
「西にも小さな国が結構あるが、今言った3つの国が代表的だな。そんで次に、東には森が広がってる。ここらは村がちらほらあるからいいが、東に行けば行くほど巨大生物の巣に近付くから絶対行くなよ」
誰が自ら好き好んで危険盛り沢山の死地に身を投じるんだ。絶対行く訳がないじゃないか。
そこまで話してふぅ、と一息ついたアレン。
「ざっと一通り説明したが、ここまでで何か質問は?」
二回質問したのに両方スルーされたしなぁ。
国や種族については特に気になることはないけど、ひとつだけ引っ掛かってることがある。
「なんで私に国とか種族とかのことを話してくれたの?」
「だから、この世界の住人になったからってさっき言っ……」
「本当にそれだけ?他に理由はないの?」
「…………」
じーーー、と目の前の強面な男を見据える。
どれほど見つめあってたかは定かではないが、やがて観念したのか深いため息を吐いた。
「妙なとこ鋭いなお前……」
そんなことないと思うけどなぁ。
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