第24話「おうちぺしゃんこ」
待った。今のはちょっとびっくり仰天だったんだけど。
アレンが住むのは別に構わないよ。空き部屋いっぱいあるし。ただ、アレンの口から同居宣言を聞くとは思わなかっただけで。
「ちょ、アレン!?さすがに女の子と一つ屋根の下で暮らすのはまずいって!」
クラークが焦った様子で一般常識としてごもっともなことを早口で述べるがアレンは素知らぬ顔で「だから?」と首を傾げる。
「空き部屋結構あるし、そこは問題ねぇだろ?」
「ん」
「こんな馬鹿デカい屋敷だし、男女一つ屋根の下とは到底意識できねぇ。家主がこんなだからこいつを異性とも思えねぇしな」
酷い言われようだ。これでも生物学上は立派な女なんだけど。
まぁ昨日1日私の態度をずっと見てたらそりゃ女としては見ないよね。睡眠に貪欲で自己中なぐうたら娘に惚れた腫れただの宣う人がいたら逆に見てみたい。そしてその人には是非とも病院へ行くことをオススメする。
「家事やる代わりにここに住ませてもらうっつーことでいいだろ?」
「いいのミノリちゃん!?」
「風呂掃除、ほんっとに時間かかるけど大丈夫?」
「上等じゃねぇか」
「やったー」
「喜ぶとこなの!?」
クラークがいちいち突っ込んでくるけど気にしない。
なにかと煩そうだけど、風呂と飯の問題がいっぺんに解決できたので良しとしましょう。
互いに了承したのを間近で見ていたクラークは私とアレンに交互に視線をさ迷わせていたが、やがて諦めのこもったため息を一つ。
「アレンの元の家はミノリちゃんの家の下敷きになっちゃったもんねぇ。無条件にいつまでも俺の家で寝泊まりするのはアレンが嫌がるし、もう決定事項かな?」
「……下敷き?」
今すごい単語が聞こえた。
アレンの家が下敷きとは何ぞ。
「俺ん家、村の入り口付近に建ってたんだがこの馬鹿デカい家のせいで跡形もなく潰れたんだよ。この家の端にある木造の破片、俺ん家の残骸なんだわ」
ひくり、と強張った笑みを浮かべるアレン。私に対しての怒りはないがなんだか責めるような眼差しを向けられた。そんな目で見られても知りません。私だって意図的にあなたの家を潰した訳じゃないもん。
怒るなら、いるかどうかも分からない神サマにその矛先を向けてくれ。私にとってもいきなりのことだったのだ。責められる道理はない。
「じゃあ私の当面の問題は解決したね。おやすみなさい」
「待たんかオラァ!!」
もう用はない、と立ち上がれば今度は皿を投げ付けられた。私が平らげてそのまま放置してた皿だ。
頭にクリーンヒットした皿は見事に割れて床に散らばった。
「……痛い」
「まだ話すこと山程あんだよ!俺が良いっつーまで席立つな!」
じわじわ痛みが広がる頭を擦る。
チッ。そう簡単にはいかないか。
畜生眠いぜ。
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