世界の仕組みについて、的な。
第18話「幸せな夢は唐突に終わる」
下を向けば一面に広がる草花。上を向けばどこまでも続く青い空。真っ白な雲があちこちにふわふわと浮いている。
温かい風を肌で感じながら、私は己の目に映るヤツと対峙していた。
「実里……ワタシというものがありながら、他所で寝るなんてっ!浮気者!」
シーツの外に綿を出して怒りを顕にするのは……私が愛用している、枕。
「違う……違うの。睡魔に勝てなかっただけなんだよ。私にはあなた以上に安心して眠れる枕なんてない」
草花というクッションの上で正座して焦って弁明する私を嘲笑う枕。
「あんなに気持ちよく寝てたくせによく言うワ。ふんっ!実里なんか、どこへでも行きなさいよ。ワタシがいなくても十分寝れるでしょ!」
「そんなっ……!」
正座を崩して目の前の枕に抱きつく。
「私を捨てないでおくれ、枕。今回は不可抗力なだけ。もうあなた以外の場所では寝ないから」
「どうかしら。実里は睡魔に抗わないもの。ワタシのいない場所で眠くなったら速攻寝ちゃうんでしょ?」
「そうだね。だから、今度からは外出するときも肌身離さずあなたを連れてく。どこへ行くにも、何をするにも一緒だよ。もう浮気なんてしないから」
真剣な眼差しで、私が本気でそう言ってるのだと伝える。暫しの間睨んでいた枕だが、ぷいっとそっぽを向いてぼそっと言った。
「………今回だけは許してあげるワ」
「枕っ……!」
ひしっ!と力強く抱き締める。
ああ良かった。仲直りできた。
枕よ。枕様よ。もう二度とあなたという絶妙に安らぎを与えてくれる存在を無視して他の場所で寝たりしないからね。
私達はいつでも一緒さ。
幸せを噛み締めて抱き締め合う私と枕。ああ、この幸せがずっと続けばいいのに。
……だけどこの幸せはすぐに終わりを迎えることになる。
ドゴォッッ!!と何かを叩きつけたような音が響く。
突如頭に走る衝撃にぱちりと目が開いた。
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