ひかる

紗谷 瞬

ひとつめ



何でもない毎日が、急に色を変えた。



表面だけがカラフルな世界で

隠すためだけにつけられた色たちが、

所在いばしょを失くし

ただ反射していただけの色たちが、

急に鮮やかに、意思を持ったように見えた。

それだけが眩しく 輝いて見えた。


私にとっては、それだけで驚きだった。

自分の中にこんな自分がいるなんて、

こんな感情があったなんて、

今まで知らなかった。


目が合うだけで、一日中笑顔でいられた。

苦しいときも

笑顔の私を見て欲しかったから踏ん張れた。

会えない日は、同じ一日が長く感じられて

楽しいことを探すのに大変だった。


知ってからはもう

忘れることは叶わなかった。

失いたくない記憶も、消したい記憶も

どちらも平等に

私からいなくなることはなかった。


他の誰と 同じことをしても動かない心が

彼にだけ 所狭しと身体中を駆け回った。




輝きは空しく、鮮やかさを保ったまま

ただ、私のそれは 届ける相手を失った。


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