アクアリウム・オン・ザ・ライン
世鍔 黒葉@万年遅筆
採掘工のリュドミラ
雷鳴が、照明灯で浮かび上がった空間に響き渡る。生身の人間なら瞬く間に圧縮破砕される高圧溶液は、高い密度を持って衝撃波を伝い、耐圧装甲を軋ませた。
「あらかた砕いた。ガニー、格納できそうか?」
「特に問題はなさそうです。姐さん。食いますから離れていてくださいよ」
「了解だ」
男にしては高め、しかしそう感じさせない少々の老練さを滲ませた声に応答し、機体をその場から離脱させる。照明灯を前に向けると、個人所有の居住ブロックほどはあろうかという大きさの輸送挺がその口を開き、リュドミラが砕いた小天体の欠片を吸引していく。
「食う」というのは、鯨が小魚を補食するが如きこの光景から地球出身の同業者が言い始めた俗語らしい。あいにくとリュドミラは実物を見たことがないが。
とはいえ、あの岩石がリュドミラたちの食い扶持であることは確かだった。この水槽世界を牛耳る三大企業ならともかく、彼女たちのような小さな採掘会社では地面を掘る権利など持てるはずもない。経済水域まで流れてくる小天体に含まれるレアメタルやヘリウム、それがリュドミラたちの扱う商品だった。
「こちらヘルメスⅠ、確認された小天体を回収した。これより帰投する」
『こちらファットマウス。ヘルメスⅠ、了解した。板を渡しておこう』
「ヘルメスⅠ、了解」
定型通りの通信を済ませ、リュドミラたちは船首を重力方向へと向ける。
衝撃波が襲ってきたのは、ちょうどその時だった。殴りつけるような波に、コックピット内の計器の針が一斉に振れる。とっさに機体を丸めるが、その一瞬でかなりの距離を押し流された。
押し流された距離と衝撃からそれが来た方向と距離に当たりをつけ、耐衝撃姿勢を解く
「隕石だな。ここまで来るってことは相当でかい。ガニー、呆けてないで被害報告」
「破損は無しですよ姐さん。内部から若干削れましたが、問題ありません」
リュドミラは長距離通信用の機器を起動する。
「そうか。こちらヘルメスⅠ、経済水域内に隕石が進入した可能性が高い。確認に向かいたい、応援を頼む」
『こちらファットマウス、オレグとユーリを向かわせよう。ガニーは引き続き帰投せよ』
「ヘルメスⅠ、了解。聞いたな、先に戻っていてくれ」
「了解です、ちゃんと二人を待ってやってくださいよ、姐さんっていつも先行するんだから」
「分かっている」
ガニーの冗談の色が薄い懸念に、リュドミラは苦い顔になる。最近になって昔の過ちを目の前で繰り返されるような体験をしてからでは、その釘は傷にしみる。当の本人がこれから合流するのだから、なおさらだ。
リュドミラは機体をサスペンドモードに移行、余った電力で耐圧装甲を構成する代謝性金属繊維を活性化させる。装甲内部に生じた金属疲労を修正する機能があればこそ、ダイヴスーツは高圧環境下での長期作業が可能となる。
オレグとユーリが合流したのは、衝撃波によってできた装甲の歪みがほとんど治った頃だった。
「お手柄だったな、ミラ。お宝を含んでいればいいが」
軽薄そうな笑みを浮かべる顔をありありと想像させる声音でユーリが通信を始める。
「私は居合わせただけだ。他のやつらに取られる前に、さっさと砕きにいくぞ」
「デカい波だったんっすよね。機体大丈夫っすか」
気遣う言葉で割り込んだのは、リュドミラたちの企業のダイバーでは最年少、オレグだった。
「もう修復させた。この程度では問題にならん、一度小天体の間に挟まれてみれば分かる」
「分かりました、今度試してみますね」
「冗談だ、無駄な支出は許さん」
リュドミラはため息を飲み込みながらぶっきらぼうに答える。喉の動きを読みとって音声を出力する通信デバイスでは、ユーリの忍び笑いまでも拾ってしまうのがうらめしい。
機体を反重力方向に向け、水蒸気エンジンを始動させる。出力が大きすぎて姿勢制御には向かないが、推進剤は辺りにあるのだから長距離移動には有用だ。ユーリ機とオレグ機のエンジンはとっくに暖まっていることだろう。
金になってくれればいいが、という呟きを通信越しに聞きながら、リュドミラは機体を加速させた。
「こちらヘルメスⅢ、経済水域内に侵入した隕石を確認」
発見した隕石は、ちょっとした金属加工工場ほどの大きさがあった。体積の割に重力が弱い水槽世界では、これほど大きな隕石が落ちてくることは考えられない。ある程度以上の大きさの天体は、そのまま通り過ぎるか衛星よろしく周回軌道に乗る岩石帯に阻まれて砕かれるか弾かれるかしてしまう。水槽世界が、通常の方法では進入できない閉鎖空間になっている理由だ。
「なんだよこりゃ、ちょいと冗談きついぜ」
ユーリがそう言うのも無理はない。リュドミラたちが見ているのは、イレギュラーな状況だったからだ。予想していたのは大量の砕けた岩石群だったが、実際は巨大な一つの岩である。
だが、リュドミラは削岩屋だった。
「とにかく、同業者が来ないうちに削ってしまおう。どれ」
機体を隕石に近づけ、右腕に装備した
そうして返ってきた手応えは、今度こそリュドミラを驚愕によって思考停止させた。
「そんな馬鹿な……こいつは、メタトロンだ…。なぜ外殻のみが、ありうるのか……」
「まじっすか、だとしたら拾いものっすね」
オレグの暢気な返答にリュドミラは我に返った。再び検査の内容を確認する。
メタトロンと言えば、この水層世界で発見された新種の物質群だ。科学者と投資家の熱い視線を集める新時代の素材として知られるが、実際に使われているのはほとんどが人工的に合成されたもののはずだ。
「密度はあまり高くないが、なんだこの硬度は……。圧縮度が高いのか」
「そいつはやばいぜミラ、どうして圧縮度が高いのに、『反重力』が発生していないんだ?」
ユーリが言うことはもっともだったが、リュドミラはそれをあえて無視した。それをこの場で議論していても意味がない、それよりも、確信があった。
「こいつには、何かがある。ユーリ、バッテリを貸せ、穴を開けるぞ」
「俺に干上がれってことかよ。ったく」
ユーリは声音に不満を隠そうともせず、しかしきびきびとした動きで機体から人の胴体ほどもあるケーブルを引っ張り出し、リュドミラの機体背面に繋いだ。
「姐さん、俺は……」
「一撃で足りるとは思わん。電力のプールを気にしろ」
「了解っす」
思わずため息を吐く。先行癖が直ってきたと思ったら、今度はこれだ。
メタトロン装甲には、生半可な攻撃は通用しない。製造の難しさからリュドミラたちの乗る量産機には使われていないが、シェルターや金庫に使われているのを見たことがある。その強度が触れ込みの通りなら、確かに真空環境下の岩石群程度なら突破してくるだろう。問題は、そんなものがどうして隕石を覆っているのかだが。
ユーリ機の電力プールから貪欲にエネルギーを受け取り、最大出力の
果たして、轟音が高圧水を駆け抜けてから一呼吸の後、支えを失った土壁のように外壁が崩折れ、残骸が水流に押し出されていった。
「こいつは拍子抜けだな。確かメタトロン装甲って、魚雷も防げるんだろ?」
ユーリの疑問に、リュドミラは投げやりに答えた。
「さあな。ジジイはこいつをメタトロンでも貫けるように調整したとか言っていたが。一応、サンプルを取っておけよ」
「へいへい、せいぜい金になるといいんだがね」
ユーリの小言を無視し、リュドミラは開けた穴をのぞき込む。
「ふむ、こいつはまた……」
外壁の内部は、液体で満たされていた。流れ出るものがないということは、内部の水圧がこっちと同じだということだ。しかし、リュドミラが思わず呟いた原因は、その奥にあった。
「こいつは明らかに、人工物だよな。正直金の臭いがしねえんだが。帰っていいか?」
「サンプルを削ったらな。ちょいと見てくる」
開いた空間の中に機体を滑り込ませ、明らかに金属で作られた隔壁を見上げる。書かれている番号はO-33。
見たところ、劣化した印象は受けない。それなりに新しいか、代謝性金属繊維が正常に働いている左証だ。
「いや、これは……」
隔壁の横に配電盤のようなものを見つけ、リュドミラは機体の指先から捜査プローブを伸ばす。
「ユーリ、こいつは生きている。こっちのスキャン程度じゃ傾向もわからん」
「へえ、ってことは、割と最近のってことか」
「私たちじゃ手に負えないな、応援を……」
壁がある度にぶち抜くには電力のプールが足りない。ユーリに本拠地への通信を頼もうとして、リュドミラは機体が押し流されていることに気がついた。隔壁が目の前まで流れて来る。
隔壁内部と外部の水圧差で水流が発生したのだ。ゆっくりと上に口を開ける隔壁を、機体を後退させながら睨む。
「開いただと」
「何だぁ?」
ユーリが機体のカメラをのぞき込ませる。
「こっちのドッグと同じだな。ふむ」
リュドミラは隕石から出て、長距離通信機を起動した。
「こちらヘルメスⅠ、隕石内部に不明な施設を発見。ヘルメスⅢと共に内部調査を開始する」
「こちらファットマウス。調査を許可する。危険因子を発見した場合、直ちに脱出を行え。念のためガニーを応援に送る、いいな?」
「ヘルメスⅠ、了解」
リュドミラが通信を切ると、ユーリが盛大にため息を吐いた。
「報告する事項が足りないんじゃないか?」
施設の隔壁が独りでに開いたことについて、ユーリが指摘する。
「不確定事項だからな」
「よく言うぜ」
リュドミラは鼻で笑った。
「そういうわけだ、オレグ、突入するぞ」
「お供するっすよ」
「メタトロン装甲の内部は通信が届かねえ。くれぐれも無茶はしないでくれよ」
「ああ、分かっている」
リュドミラとオレグが隔壁内に入り、ユーリは外で待機する。リュドミラが隔壁内のデバイスに捜査プローブを伸ばすと、またしても独りでに隔壁が動いた。
「見張られているのか。こっちのアクションに反応しているようだが」
「お化け屋敷にでも来た気分っすね」
やがて隔壁内部の水が排出され、内部の隔壁が開く。二人は機体を自立させて、内部へと侵入した。
水中環境下だけでなく、空気環境下でも活動できるのがダイヴスーツの優れた点だ。水中ではヒレのようにくねらせて機体制動を行う二本の足は、半魚人よろしく地面を蹴っている。
「構造は変じゃないっすね。普通にブロックを連結させた感じで」
しばらく移動して、オレグが印象を口に出した。
「ああ、空気があるし、メンテナンスも行き届いている。最近まで人の手が入っていたようだな」
空気環境下では、真空環境下よりもメンテナンス頻度が格段に増える。菌類や埃によるダメージ、それらを抑える空調などなど、人間が立ち入らないのであれば、それらのコストを負う必要などない。
そう考えるほど疑問が湧いてくる。そんな施設が、何故落ちてきたのか。何故、水槽世界の周回軌道にあったのか。
「まさか生存者がいるとは思いませんけど……。衛星軌道上にあったとすれば出入りに難儀しそうな施設っすね」
「大方、ワープ装置でも使っているんだろう。贅沢なことだ」
「それはまたSFって感じっすね」
せめて生きている端末にアクセスできれば、行動の選択肢を増やせるのだが。さきほどから目にするのはロックされた扉ばかりで、持っているツールではびくともしない。電源は生きているが、落下時の衝撃のせいか照明が壊れていた。
「というか、どうして突入することにしたんっすか。こんな所じゃ、採掘も何も……」
「お前の機体」
オレグが言い終える前に、リュドミラは言葉を被せた。
「そいつはユニオンとソヴィエトが小競り合いした地点にわざわざ赴いて拾ってきたやつだ」
「おっさんが組み立てたんじゃなかったんっすか?」
リュドミラは顔を渋くした。
「ダイヴスーツのパーツは高級品だ、そんな簡単に手に入るものか。軍用の高性能機ならなおさらだな。ほとんどスクラップだったそれを削岩機に組み直したのはソールだが」
技術担当のソール・ベリンスキーなら機体を一から組むことは不可能ではないだろうが、機体を動かすOSやドライバは流石に埒外だ。マトモな機体を組むには、オリジナルを拾ってくるのが一番だ。
「あたしたちだけじゃなく、小さな採掘会社ならジャンク品のサルベージは基本だ。採掘業に染まるつもりなら覚えておけ」
「了解っす。サーバールームとかあったら引っこ抜いてやるっす」
サーバーだけ引っこ抜いてもあまり意味がないのだが、リュドミラはあえて黙っていることにした。
「そこの空調とか、ちょっと見てみたいっすね。ちょっと拝借しても……」
「待て、今何か……」
オレグの暢気な発言に早くも小言を放とうとしたところで、レーダーに第三者の存在を関知した。リュドミラは鋭く声を上げる。
「アイゼン起動、念のため戦闘状態に移行しろ」
「了解っす」
ダイヴスーツの爪先を床に食い込ませ、地上での機動力を確保する。さらに両腕のシールドを展開して戦闘モードに移行する。
「来るぞ……!」
果たして暗闇の向こうからやってきてのは、リュドミラの知識に当てはめるならば、「鰐」としか言いようのない動体だった。
「ワニだなこりゃ、バカにデカい」
ダイヴスーツの身長と比べれば、ちょうどせっつく大型犬くらいの大きさだ。人間ならばひと飲みにできるだろう。
巨大鰐はとっくにこちらに気づいているようで、逃げることもせず勢いを増して突っ込んでくる。
「私が止める。お前は砕け」
「了解っす」
リュドミラは機体の左足を地面に打ち突けて機体を固定し、鰐を迎え撃つ。鰐は突進する勢いのまま体を傾け、巨大な口を開く。胴体に食いつかれては叶わないと、リュドミラは機体の左腕を突き出した。
ギロチンのごとく閉じられた咢は盾を展開した腕にかぶりつき、一瞬でひしゃげさせた。アラートが悲鳴のように響く。
「このっ!」
予想以上の力に戦慄しながら、リュドミラは機体を傾け、腕ごと鰐を捻って無理矢理仰向けにさせる。そのまま右腕を振り下ろし、鰐の顎を固定する。
「やれ!」
「うい……っす!」
アイゼンで床を砕きながら、オレグの機体が巨大鰐に飛びかかる。右腕を鰐の白い腹に叩きつけると、左腕の電磁削岩機(マグパイル)を起動。電極を押しつけ、雷そのもののエネルギーを解放する。
電磁削岩機は本来、水中での放電現象によって生じる衝撃波で岩石を砕くものだが、そのために放出される電力は膨大だ。それを直接流し込まれて無事でいられるようなら、それはもう電気信号で動く生物ではない。
巨大鰐は一つ痙攣を起こすと、そのまま動かなくなった。オレグもまた、腕を振り下ろした姿勢のまま固まる。
リュドミラが荒々しく鰐を腕から引き剥がし、顔をしかめる。機体の左腕はもう完全にスクラップだ。
「何をしている。早く離れておけ」
オレグが慌てて巨大鰐から離れ、しげしげと照明で照らす。大きさこそ非常識だが、鱗はくすんで灰色と見分けがつかないような緑色で、はっきり言って地味だった。だが四本の足は胴体に不釣り合いなほど大きく、杭のような爪は打ち突けるだけでダイヴスーツを破壊できそうだ。叩いた感触からは、この巨大鰐の鱗は金属繊維に近い性質を持っていると思われた。
「こいつ……生体兵器っすよね。どうしてこんな所に」
「どうしたもこうしたも、こんな所だからこそいるんだろうよ。この施設が衛星軌道にあったのなら、そこまで不思議な話ではあるまい」
人間が十分に管理できないほどの広さを持つ水槽世界では、地球と同等か、下手したらそれ以上に自律行動、自律増殖する可能性のある生体兵器は御法度だ。水中という物体が集まりやすい環境下で、その性質は容易に制御不能の災害となりうる。 後ろ暗い研究をするのならば、岩石郡内は格好の隠れ蓑だろう。
「こんなのがニ体も三体もいないっすよね……」
「どうだかな、大方、落下した時の衝撃で檻が壊れたんだろうよ。一匹だけとは考えづらい」
「そいつはおっかねえっす」
言葉の割に声を震わせていないオレグに、リュドミラは鼻を鳴らす。
「さっさと取るもん取ってずらかるぞ」
と、盾と爪を畳んで先を急ごうとした矢先、重々しい金属音が響き、それを皮切りに付近の扉が動き始める。リュドミラの言葉に反応したわけではないだろうが、何らかの干渉を感じずにはいられなかった。
「もしかして、このワニが来たのも誰かの思惑だったりして」
ぞっとしない想像をオレグを口にする。リュドミラは苦い顔をしたが、引き返す気はなかった。戦闘態勢をとりながら、開いた扉の中に進入する。
照明を向けると、そこには巨大な人型があった。オレグの分の照明が加わり、全貌がカメラアイに映る。
「こいつはまた、ずいぶんと……」
水中での活動を前提として作られたのであろう流線的なシルエットは、リュドミラたちが乗っているダイヴスーツと共通している。だが人間でいう胴体にあたる部分が極端に短く、ともすれば足と腕の生えたイルカに見えなくもないダイヴスーツと比べると、ずいぶんと人間的な造形をしていた。等身が高いのに丸みを帯びた形状をしているから、どことなく女性的な印象を受ける。
「お宝発見っすね。どれどれ」
リュドミラが止める間もなく、オレグはダイヴスーツのハッチを開いてその人型の機体に取り付いていた。背面の扉はいつの間にか閉まっていて、調査した限り空気は清浄だが、それにしたって不用心が過ぎる。
「おい、勝手な行動は……くそっ、これだから元傭兵は!」
何が起きても対応できるように、リュドミラはいつでも床に爪を立てられるようにする。オレグはあっというまに人型のハッチを開き、中に滑り込んだ。ナノマシンを通じて会話は素晴らしくクリアに通じているはずだが、こういう時、オレグは何を言っても聞かないことをリュドミラは経験的に知っていた。
「すげえっすよ姐さん。こいつはやっぱりダイヴスーツだ。いつも使ってるOSと互換性があるっす。機能一覧はっと……」
「そうか、早く降りろ」
「どうせこんな場所じゃ牽引できないっすよ。使えるものは使っちまって……」
ぶつり、という音がして、オレグの声が途絶えた。
「どうした?」
リュドミラの頭の中で、ナノマシン製ではないアラートが鳴る。
「おい、オレグ! 応答……」
同時に通信状況をチェック。五秒間ほどオレグからの通信が途絶えており、そして今しがた生き返ったことを知る。
「くそっ、おいオレグ! 返事をしろ!」
帰ってくるのは正常なバイタルサインと、意識レベル低下の警告。何が起きたのかはわからないが、尋常な状況ではない。
リュドミラは機体を近づけ、探査プローブをハッチ近くの緊急用ポートに接続した。操作を要求するが、弾かれるばかりだ。
と、何かのプログラムが人型ダイヴスーツから送られてきて、リュドミラは身構える。そのプログラムの表題(ラベル)を読み、意外さに目を細める。
「遠隔操作プログラム……?」
表示されたのはオレグが閉じこめられた機体の外観と、施設内部における位置情報だ。「移動する地点を選択してください」と指示してくる。
今持っているツールではこの機体をどうこうできるとは思えない。リュドミラは今すぐオレグを閉じこめた機体を破壊したい衝動を押さえて、そのプログラムの指示に従い始めた。
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