第3話 プロローグ (3)

 するとさ、そこには、また、男性の姿が見える。だから傍から見ているこちらと少年も、男へと注目したのだよ。


 でッ、男の様子を凝視すると──。彼は体操座りをしながら俯いている様子が確認できたのだよ。


 まあ、様子が確認できたから、更に彼は外で何をしているのだろうか? と、傍から見ているこちらや少年も気になるから、遠眼鏡のように彼の容姿を拡大して凝視することにするね。


 だってさ、傍から見ている皆も気になるとは思わないかい? 彼が体操座りをしている背にある屋敷の窓の中には、信じられないぐらい美しい。女神のような女性と、大男とが、獣のように荒々しく交わり、逢い乱れているのだよ。


 そんな部屋の外で、二人の荒々しい吐息と嬌声を男は体操座りをしながら聞いている訳だから。変出者か? 女神のような美しい女性のストーカーなのかも知れない? と、思いながら。彼を拡大してみると──。


「うぅ、ううう……。うぅ、ううう……」


 ……ん? あれ? 彼は泣いているようだね?


 だからこちらにいる皆も、『一体何故?』と、言った感じで、近くにいる者達と顔を見合わせているのだよ。


 だって、変出者かストーカーだと思っていた男が、声をなるべく出さない様に耐え忍びながら、すすり泣きをしているからこちら側にいる者達……。それと悪夢に魘されていた少年も困惑をしている。


 だって、部屋の中では、AV女優と比べても比較にならないほど美しい女性が、淫らに乱れて、男と交わり、妖艶に肢体からだを動かす様子を見ることが出来るのに。部屋の外にいる男は一切、その光景を目視しようともせずにただ泣いている。


 外で大人しく二人の淫らな行為が終わるのを待つかのように……。


 それと、先程言葉を漏らしたと思うが。部屋の中に居る女性が、窓の外にいる男に気がつき。彼を見詰めている。


 するとさ、窓の外で泣く男性。彼女の視線を感じたのか? 自身の顔を起こし。自分を見つめる女性へと視線を向けると、お互いが目を合わすと。女神のような美しい女性は、『うふ~』と妖艶に笑みをしてみせた。外にいる男に対して。まるで自分自身の妖艶で淫らな様子をちゃんと見ろと言わないばかりにね。


 するとさ、男の方は、女神のように美しい女性の妖艶で淫らな様子を確認すると号泣──。「うわぁあああっ!」と、自身の両頬に、両手の爪を立てながら気が触れた状態で更に号泣を始めるのだよ。


 そんな気の触れた様子の男を見ながら、女神のような美しい女性は、艶やかに濡れに、濡れた唇を開き──。


「さようなら、あなた……。ではないか……。オーズさようならもう二度と会うこともないでしょう……」


 と、声を漏らすと。只今交わっている最中の大男に抱き付き、荒々しく唇を重ね堪能し始めたのだよ。


 でッ、また少し時間が経てば、部屋の中から雄と雌との荒々しい吐息……。そして嬌声が大きく聞こえる。外の男に聞こえるように、わざとしているのか? と、思えるほどの大きな女性の嬌声なのだよ。


 するとさ、外で気が触れたように泣く男がこんな言葉を漏らす。


「お前達二人のことは絶対に許さない……。神であろうと絶対に末代まで祟ってやるからな……」


 と、呪いの言葉を漏らしたのだよ。それも男の目からは、透明の涙ではなく、血の涙が滝のように流れている。


 そんな男の怨念の映像を、映画のワンシーンのように見る。こちら側と少年なのだが。


 う~ん、何故かしら少年は、またその映像を見て泣き出すのだよ。


 まあ、泣き出すだけならいいのだが。この部屋の窓に映っていた、女神のような美しい女性からオーズと呼ばれた男と同じ台詞……。


「お前達二人のことは絶対に許さない……。神であろうと絶対に末代まで祟ってやるからな……」


 まあ、こんな恨みごとを同じように漏らす。


 だからこちらも気になり、泣く少年の顔を再度見て驚愕──。


 だって映像の中で泣く、オーズと呼ばれる男と少年の顔が同じだから驚愕をしたのだが。


 う~ん、でもね、少年がこの映像を凝視して泣くのは、今日始まったことではない。


 先程もこちらが言葉を漏らしたが、彼は物心ついた頃より、この悪夢を見て魘されている。


 と、言うことは? これから先も少年は、夢の中なのか? 現実なのか? わからない映像を誰かわからない者に見せられては、泣き叫び、気が触れてしまうのだろうな~? と思うと。こちら側も彼に対して、少しばかり同情をしたくなるのだよ。



 ◇◇◇◇◇

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