第2話 プロローグ (2)

 まあ、そんなことをこちらが思っていると。彼は、悪夢の為なのか? 自身の目をあわてて開ける──。すると彼は、『バサッ』と身体を起こしたのだよ。それも勢い良く。そして自身の身体を起こし終えると今度は、自身の額から滲み出ている汗……。冷や汗と言う奴を拭い始めた。『ふぅ~』と、溜息を漏らしながらだよ。


 まあ、そんな彼の様子を見ると、夢見から覚めて、やっと気持ちが落ちついたのかな? と、こちらも安堵しながら少年を凝視していたら。


「えっ? うう……。またか……。また、あんたか……。一体俺に何が言いたい……。そして、何を見せたい……。いつもくだらない。アダルト映像ばかりを見せやがって……」と、少年も口から荒々しい声……。と、言うよりも? 不快感をあらわにして……。とも違う? 脱力感のある悲しい声のような気がする……。


 まあ、傍から彼のことを凝視しているこちらは。何故少年が涙を流し始めたのかは理解できないが?


 だって少年が涙を流しながら凝視している物は、自身の部屋の窓に映る光景は、決して涙を流すような恋愛ドラマではない。


 傍から見ている者達が雄と呼ばれる者達でなければ、恥ずかしくて、自身の両手で目を覆いたくなるような。十八禁仕様の恋愛ドラマ……。AVのブルーレイディスクにも引けを取らない様な、獣化した荒々しく動く男女の交わりと、嬌声が漏れ聞こえる映像と音とが窓に撃っている……。

 それを彼は、『ハァ~、ハァ~』と、息遣い荒く凝視をする訳でもなく。


 だって彼の容姿を見てもわかるように。どう見ても彼は、思春期で多感な時期の年齢であるはずなのに、興味津々で見る訳でもなく、涙を漏らす。自身の不満を漏らしながら。

 するとさ、今度は、男の上に跨り抱き付いて、妖艶に自身の肢体(からだ)を動かす女性が、自身の乱れた長い銀髪の髪をかき上げ終えると──。少年の方へと顔を向け、見詰め始めたのだよ。


 でッ、その女性の顔が本当に凄いのだよ。多分、一度見れば忘れることも出来ないほど美しい……。もう、この世の者ではないのでは? と、思えるような女性……。


 そう、この世に、美の女神と言う者が本当に存在するならば、今少年の見る映像の中で、妖艶に乱れながら、自身の肢体からだを荒々しく動かす。彼女のような女性だと思う。


 う~ん、でも、何故、少年は、二人の男女の交わりを凝視して泣くのだろうか? 本当に不思議でならない。


 と、こちらが思っていると、窓に映る女神のような女性が見詰めている者は、悪夢に魘されていた少年ではなくて、彼女が男と獣のように激しく交わる部屋の外を凝視しているようだよ。


 だから、傍から見ているこちらと、夢に魘された少年とは、同調したように、彼女の目線の先へと、視点を変えて凝視──。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る