第59話 別の世界に逃避行? (11)

 そうそれが、俺が最初にうちのカミさんから聞いて、思った事なんだよ。だってさ、主神オーディンといっても、俺自身会った事もないし、話した事もない訳だからね。


 でもさ、只一言述べるとしたら。うちのカミさんが、その名前を口に出した時に顔色を変えて──震え怯え始めたのだけは、見ていても手に取るように分かった。


 実際さ、今もね、俺の胸にしなだれ掛かって、震えながら怯えているから。フレイヤが少しでも安心して落ち着けるようにと。強く抱き締めたのだが……


 でもね、うちのカミさんの様子……。特に怯え方は異常だから、俺自身もどうしても気になるからね。再度カミさんに、聞き直す事にする。


「あのさ、フレイヤ、もう一度尋ねるけれど? 主神オーディンって誰よ?」


 俺の胸で怯えている、カミさんの華奢な身体を両手で掴むと──慌てて身体を起こして、フレイヤの美しい紅玉の瞳に向かって俺は話掛けた。


 するとさ、うちのカミさんは、俺から目を反らして。

「えっ? いや、あの……」

 と、だけ答えると俯いてしまったよ。


「“えっ、いや、あの” では、分からないだろ、フレイヤ? これだと俺は、お前が何を言いたいのか、全然意味が解らないよ? だからちゃんと説明をして欲しい……」


 俺さ、ついついとムキになって、カミさんの身体を両手で揺らしなが延べたよ。だって今の調子だと、フレイヤが何を延べたいかも解らないし。何に怯えているのも解らないから、このままでは、対処のしょうもないから。


 尚更イライラするから、ついついと強目の口調でモノを申したんだよ。


 だってさ、惚れてしまったし、俺の嫁でモノだから。……ついついと、ついついとだよ……。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る