第28話

第27話 シイナという男


「ガッハッハ!遠いところよく来てくれたのお!さぞ気味が悪かったろう?すまんすまんな!ご覧の通り絶賛営業中だ!おっと、絶賛、な訳ないな。絶叫営業中ってとこだ!ガハハ!」


そう言ってシイナと4人の前にすわる大男、閻魔大王は4人を歓迎した。


「いつもお世話になっています。閻魔様。不具合や、不都合などはございませんか?」


「あぁ!いたって問題なく地獄は稼働しておる。門も許可のあるものしか出られなくなっとるしな。警備もバッチリだ!そこのシイナがな!泥人形から屈強な門番を作ってくれたからな!優秀な男よ!」


「勿体無いお言葉です」


「帰りに研究室でも見せて貰えばどうだ?なかなかにこれまたおぞましいぞ、ハッハッハ」


「問題がないのは良かったです…考えてみますね」


「悪いな!わざわざ来てもらったが、特に問題はないぞ。さあ帰った帰った、生きている人間がいていい場所じゃない。下手打つと身体取られちまうぞ!」


「ひ、ひいっ!」


「…お気遣いありがとうございます」


「おう!お前らもこんなとこに来なくて済むよう、死なねーようにな!なはは!」


笑い声が大きく、快活な閻魔の姿は伝え聞くイメージとは真逆のものであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「そういえばですが、私の研究室見ていかれますか?帰りの道の途中にありますが…」


「あ、え、いいんですか?」


「奈美、怖いんじゃないの?」


「いや〜みるだけならいいかなあっ…て。そういう実験場みたいなの見るの好きだし…あ、みんな帰りたいなら早く帰ろう!」


「僕は見に言ってもいいですよ」


「俺も興味があるな」


「では私もついていきます」


「それではご案内いたしますね」


シイナはこぼれ出る笑みを抑えることができなかった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(こんな好機がくるなんてなぁ…まさか器が一気に4つも手に入るなんざ…閻魔には感謝しないとなあ)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「こちらです、さあどうぞ」


「ほんとだ、入って来た穴のすぐ近くだったんですね」


「お邪魔します…ってうわぁぁぁ!」


「おやおやすみません。どうやら泥人形が驚かせてしまったようで…」


「いえいえ…うわぁ…すごい!本当に実験室って感じなんですね!」


「泥人形もお手伝いしてるんですか…むしろハイテクですね」


「普通の化学実験みたいな器具もあるんだな…」


「すみません…そこそこで帰りますので…」


「いえいえ!滅相もございませんよ!ぜひゆっくりじっくりみてください


なんてったってあなたたちは


大事な大事な入れ物ですから…」


実験室の扉がひとりでに閉じる。


「え?今なんて」


ドゴォッ


地面が盛り上がり奈美が宙へと吹き飛ばされる。


「ガッ…ハッ…」


「奈美!」


「なっちゃん!」


雅信が奈美を受け止め


「てめぇ…何しやがる!?」


士郎がシイナを睨みつけた。



「いやいや、安心してください。殺しはしませんよ。あなたたち4人とも。殺してしまったら死霊の私と変わらなくなってしまいます」


「なんの話だ!」


「死霊は地獄の門を、現世へと開けることはできません。ですから、あなたたちに開けていただこうかと。そうすればこの化け物たちを連れて人間の世界へ進出することができます」


「して…何するつもりだ!」


「何をする?はっ、わざわざ地獄から舞い戻るんですよ 、復讐ですよ!復讐!私の…私の考えの偉大さを理解できず…人体の複製や、怪物の創造をけがらわしく馬鹿馬鹿しいと断じた人間どもにわからせてやるんですよ!



…私の実験は正しかったとねええええ!」


シイナの叫びとともに実験室と呼ばれる洞窟の床が、壁が、天井が隆起し夥しい数の泥人形が生まれる。


「奈美、大丈夫?!」


「なん…とか…!それよりこの泥人形どうにかしないと!」


「ええ!とってもまずい状況だわ…閻魔様の許可が出ていても、あちら側への門は許可後1時間ぐらいで閉じでしまう…」


「えぇ!そんな!じゃあ…えっと…」


「閻魔の元を出てから大体30分は経ってる、あと30分でこいつらを片付けないとな」


「片付ける!?バカを言ってんじゃねーよ!やれるものならやってみろおおおおお!」


その声を合図に泥人形が一斉に4人に飛びかかる。


「いくぞ」


「「「神憑変化!!!!」」」


それぞれが変化をし、戦いの火蓋は切って落とされた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「なん…なの…こいつらぁ!キリがない!」


「あるわけねーだろぉ!?泥なんてこの地獄にや無限にある!第1てめーらがいくら壊したところで崩れた泥はまた人形になるんだよお!!ひゃははははは!!!」



「時間が!まずい!このままだと地獄から出られない!」


「安心しろよ…ここは閻魔が感知できない結界を張ってる…心配せずにいつまででもやろうぜ」


「くっそっがぁぁぁぁぁ!!!」


士郎が叫びながら泥人形を砕く。


の瞬間後ろから強い衝撃にぶっ飛ばされ壁にぶつかる


「ぐっ、油断して…」


そして攻撃された主を確認する。


「雅信…お前…何しやがる!!!」


「士郎、悪い!お前の後ろが扉だ!無理矢理開けろ!」


「…そういうことか逃げるぞ!!!」


その声に霧子が反応し目の前の敵を片付け扉に向かい走る。


「雅信くん…足がなんか掴まれてる!」


奈美が雅信の異変に気付き、その腕を掴みひき抜いて走り出す。


「仲間吹っ飛ばすとはやるじゃん。逃がさねえけどなぁ!!!」


そのタイムロスを狙い、シイナがより多くの泥人形を生み出す。


雅信は振り向くとその数の多さと


扉までの距離を確認した。


その瞬間、奈美は自分の左腕にかかる負荷が軽くなったことに気づいた。


そこには


肘から先のなくなった雅信の腕があった。


「嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァ!!!!」


振り向くと雅信が泥に取り込まれていく姿が見えた。


咄嗟に戻ろうとする奈美を士郎が止めた。


「離して!雅信くんが!雅信くんがぁぁぁ!」


「士郎!ありがとう!そのまま走れ!」


振り向くことなく士郎は奈美を抱き抱え走る。


士郎の攻撃によって開いた隙間に3人が突っ込み、随分小さくなった空間の歪みに吸い込まれて言った。


扉は泥によって閉じられた。


そしてその先の歪みは跡形もなく消え去っていた。








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