第25話
第25話 地獄への遠征
「…これで。最後ッ!」
奈美が鳥型の魔物を叩き潰しながらそう叫んだ。
霧子がそれをねぎらう。
「おつかれ奈美。今日の相手は強くはなかったけど、怪我はないかしら?」
「かすったくらいかな、平気平気」
「これくらいの敵なら楽でいいんだがな」
「士郎くん!お疲れ様、どう?慣れてきた?」
「まあ、そこそこかな?サンサンとルナルナの武器が便利なんだけどちょっと扱いにくいんだよな…」
「失礼な!」『失礼な!』
「はははお2人は今日も元気そうだね…」
霧子がスマホを起動し、今日のバイトに参加していた雅信と彩香の安否が確認できたらしく2人に声をかける。
「2人ともお疲れ様でした!怪我をしてしまった人はちゃんと真春さんに見てもらうように!それでは解散ということで!」
解散、と言いつつ3人で仲良く城波神社へ帰っていくのだった。
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「いや〜毎度毎度ごめんなさいね真春さん…」
「ほんとよ…何をしたらこんなに傷まみれになるのよ。そんなに敵が強かったの?本当に大丈夫なの?し、心配なんだけど」
「あはは、ありがとうございます。どうにも戦うの下手くそみたいで」
「そ、そうなの?前すごくかっこよく戦ってたのに…」
「え?かっこよかったですか?嬉しいですねそれは」
「はっ!と、とにかく気をつけてよね!?」
真春が声を荒げた時、机に置いてあるモニターから奈美の声がした。
「真春さーん、無事に帰りました。けが人はいません」
「あ、はーい、ご苦労様でした」
「ふぅ…今回も怪我は大丈夫みたいですね」
「…あなた、えらく奈美さんのこと気にかけてるのね」
「え、あ、まあ…そうですね」
「…なに、好きなの?」
「それは無いです」
奈美を気にかける雅信がすこし気に障りからかったつもりだった真春だったが雅信の反応は極めてきっぱりしたものだった。
「そ、そうなの?」
「ええ、ただただ、無事でいてほしい、それだけです」
「ふ、ふーん…」
それはそれで腑に落ちないような、私の場合だったらどうなんだろう、などもモヤモヤしながら真春は相槌を打った。
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「じ、地獄!?」
「ええ。別に、地獄の罰を体験するわけじゃ無いわ。人間界に最も近い異界である地獄の主、閻魔大王に挨拶に行くだけよ」
「え、閻魔様…本当にいるんだ」
「そこで人間界で死んだ人たちの魂を管理してもらっているわけだからね、あとは常にその死者の魂の逆流が起こらないように『門』の点検にも付き添ったりするらしいわ」
「へえ…それって何人で行くの?」
「不測の事態に備えて…私含めて4人ね」
「あんまり行きたく無いなぁ…」
「クジで選ぶわよ」
「行きたくないとかいわなきゃよかったあ!当たりそう!」
「ふふふ、今日は12人みんないるみたいだし、行きましょう。そこで決めるわ」
そして2人はロビーへ行った。
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「じゃあくじの結果…私、奈美、鍵瓜くん、坂上くんの4人で行ってきます」
「ほらぁぁぁぁ!」
「ふむ、地獄かあ。面白そうだなあ」
「趣味悪いなお前…地獄…ですか。会わないといいんですが」
「雅信くんなんか言った?」
「いえいえ!少し怖いですが、仕方ないなって」
「じゃあ明日の土曜日、出発するので身代人形と、あと残りの皆さん、すみませんが留守番と、イレズマ様や支部長の指示でバイトをお願いします」
「「「「「「「「はーい」」」」」」」」
こうして解散となった。
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翌日、城波神社の前の空間に赤っぽい穴が渦を巻いて存在していた。
「って、普通にこの神社から行けるんだ?」
「ええ、入り口はどこにでもあるわ。人がどこで死ぬか分からないし…逆にあちらからこちらには限られた場所からしか戻れないらしいわ。案内役さんがいるらしいけど、気をつけましょう」
「うう、やだなあ…」
そして4人はその穴へと足を踏み入れた。
「ここが…地獄?」
奈美たちがいたのは全体に赤い洞窟のような場所だった。
「ようこそお越しいただきました。閻魔様より話は聞いております。私は本日の案内を勤めさせていただく、シイナ・キザラと申します」
シイナと名乗る男は恭しく礼をした。
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