第6話
第6話 弓道部の金谷
「とは言っても、どうやって話を持ちかけるの?」
「そうね、とりあえず部活終わりに後をつけてみましょう。1人になった瞬間を狙って提案してみるわ」
「はーい」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はぁ…」
「どうしたよ金谷、今日は調子悪いな」
「なんか、すいません、乗らなくて…」
「まあ経験者だからっていつもうまくいくとは限らないしな、慌てずにやれよ」
「すいません…今日は弓と矢持ち帰ってメンテしてみます」
そう言って帰路に着いた。今日だけじゃない。最近だ。最近調子が悪い。小さい頃から姉貴の真似して始めた弓道だが、スランプなんて初めてだ。
「なんでだろうなあ」
暗い気持ちのままバスに乗った。
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「なんか大変そうだねえ」
「彼は中学の頃から弓道でそこそこ有名だったから、プレッシャーもあるのでしょうね」
「そっか…ちなみに、イレズマ様はなんで彼を?」
「異界適性度は38、そして何より彼は遠距離攻撃ができるということらしいわ」
「なーるほど、確かに必要ね」
「あら。珍しい、今日は街で降りるみたい。私たちも降りましょう」
「はーい」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
気分転換になるかと思って、街で降りてみたが余計に暗い気持ちになるだけだった。よく考えれば弓を背負ってたらゲーセンにも本屋にも入れない。
「はあ…」
今日は時間はかかるけど歩いて帰ろう。ゆっくり自分の射を見直して
「きゃぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
突如悲鳴が背後から聞こえた。俺は自然に足を声の方へ進めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「動くなぁ!動いたらこいつの命はないと思え!」
スーパーの前で男が女性の喉に包丁を突き立てて大声で怒鳴っている。
「ちょっ、なによあれ!」
「こんな時に…スーパーの強盗が暴走したのかしらって…奈美!」
「うん…わかるよ…なんか黒いの…」
「この街、多いのよね…あれは憑かれてるわ」
「まずいよ…なんか周りの人までどんどん目が虚に!」
「霧状の魔物…こっちに来たわ!」
「なんで襲ってくるのよ!」
「落ち着いて!アルバイターはなった時点で身体能力が底上げされるわ!並大抵の人間なら相手にならない!」
「わ、ほんとだ、動きが鈍く見える…霧子!この人たち首になんかある!」
「これを潰せば…これだ!奈美!この突起を潰して!」
「うう、どんどん増えてる気が…あの強盗についてるでっかいのを倒さなきゃ…よーし」
2人が腕をまくり、その言葉を唱えようとした瞬間
「なにやってるんだ霜村さん!今助けるぞ!」
「か!金谷くん!?」
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「強盗が暴れてるのか…なんかおかしいな、周りの人まで別の人を襲い始めている…ん?」
そんな中で男に腕を掴まれて、振りほどこうとしている女の子が目に入った。
「あれって…同じクラスの!もう1人はたしか隣の…」
気付いた時には走り始めていた。
金谷家の家長である父の方針は「困っている女性は助けろ」である。その方針のせいで親父は妻である母にあらぬ疑いをかけられることが多々あった。痴漢をしていた男を半殺しにして警察のお世話になったこともあった。
しかし口では色々言いつつも家族みんなが父親を尊敬していた。息子である陽太ももちろんその1人だった。
(危なさそうだ…だが女子を放っておくなんて出来ん!)
女の子が困っている。危険かもしれないがそこに飛び込むには理由が十分すぎる。
そして彼は無類の女の子好きであった。
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「うおおおおお!」
奈美の腕を掴んでいる男にタックルをかます。
そして後ろから別の男にパンチをかまされる。
「がっ…」
(なんだよこれ…人間の力じゃねえ…)
「金谷くん!」
「逃げろ!!霜村さん!そっちの彼女も!」
「えっ…」
「俺は大丈夫だから!」
(正直1つも大丈夫じゃねえ…なんだこいつら…バケモノかよ…けど…あの2人だけは逃がさねえと…!)
ドスッ
金谷の首筋に鈍い痛みが走った。
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