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そんなユキを尻目に、二人は口喧嘩を始める。閑静な街並みに二人の声が響く。
「な!?サトシ、それは無いだろう!」
「だ、だって!僕が言わなかったら二人で付き合っちゃうでしょ!」
タケルは頭を抱える。ジョギングで通り過ぎていった人を無視して、彼はため息をついた。
「全く。どう収集付けるんだ、これ」
「それは、ユキに決めてもらうしかないよ」
二人はユキを見る。彼女は少し落ち着いたようで、真っ赤に染まった顔は少し落ち着いていた。
「サトシ、タケル。私は二人が好き。でもね、私と付き合ってもすぐにお別れするんだよ」
ユキの言葉に、二人は俯いた。街灯が二人の曇った表情を照らす。
「だからさ、三人で最後の夢を見ようよ」
その言葉に二人は顔を上げる。意図は掴めないが、それでも悲しい話では無いと、二人は察する。
「私は、三人で恋人になりたい」
どうせ最後には別れるのだから、とユキは言う。そして彼女は車椅子から少し立ち上がって、二人を抱き寄せる。
「二人とも、大好き」
なんて我儘で傲慢な人なのだと、サトシとタケルは思った。しかし抱きしめられて伝わる彼女の温もりは冷え切った身体を優しく温めてくれる。
「お別れまで、一杯愛し合うの。それで別れたら、ちゃんと私のことは忘れるの。でも、たまには思い出してね」
ユキはそう言って笑う。
「ねえ知ってる?ちゃんと探せば、今でも星は見えるのよ」
三人は夜空を見上げた。彼女の言う通り、オリオン座の星々がすぐに見つかった。
「ほら、忘れてもきっとこんな風に簡単に思い出せるでしょ」
そしてきっと、蘇った思い出はあの星の様に輝いているのだろうと、二人は思うのだった。
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