星となる彼女

violet

 昔はもっと星が沢山見れたと人は言う。それでも灰色の雲に隠れながら、オリオン座の星々は公園に居る三人をひっそりと照らす。


 冷たい風が通り過ぎて女性の黒い髪が靡く。彼女は自身の真の姿を誤魔化す為に偽物の髪を抑えた。


 彼女の事情を知っている二人は、その仕草に心が痛み、涙を零した。


「タケル、もう宿題は見せてあげられないんだから、自分でしっかりとやるんだよ」

「分かってるよ」


 タケルは握り拳を解くと、涙を拭って返事をした。幼稚園の頃から変わらない負けん気を見て、女性は安心したように笑う。


「サトシ、もうタケルだけになっちゃうんだから、早く友達を作りなさい」

「うん、頑張る。だから心配しないで」


 目元を真っ赤にしてサトシは返事をした。彼は昔から優しい人だったと、彼女は思い出した。


 彼女から白い息が漏れる。冷たい風が彼女の体温を徐々に奪っている様だ。


「ユキ、身体に触るから戻ろう」


 サトシはそう言ってユキが座る車椅子を動かした。


 しまい忘れたクリスマスの飾りが夜道を彩っていた。タケルはその飾りを見るとそわそわして、やがて口を開く。


「ユキ、あのさ」


 タケルらしくない、どことなく弱々しい様子にユキとサトシは不思議そうに彼を見た。


「これで最後だから言うよ。俺はユキのことが好きだ」


 その言葉はユキの心を震わせ、白い息を桃色に染めた。


 一方でサトシはタケルの思いもよらぬ言葉に、焦ってしまう。何か行動に移さなければと思って彼は急いで口を開く。


「ず、ずるい!僕だってユキのことが大好きだ!」


 立て続けに愛の告白受けて、ユキは心の整理が追い付かない。やがて恥ずかしさと嬉しさで顔を真っ赤にしてしまう。

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