第五十六話:絵師問題

 そうこうして私たちは、日差しの強まった中庭を抜けて正面の門の付近まで歩いてきていた。

 持ち物は版下三枚と、くそたろう巻の一を風呂敷で包んだもののみ。

 ミネくんに比べれば身軽なものだ。


 今日はいつもよりも暑いなぁ。

 じりじりと焼け付く陽光に、自然と汗がたれてくる。

 庇の下は広く陰になっているとはいえ、長時間立ちっぱなしでいる門番さんは大変そうだ。

 ごくろうさまですと彼らに声をかけようとした瞬間、こちらが口を開くよりも早く先方が言葉を発した。


「お帰りですか、隊長!」


「大橋さんに香川さんも、お疲れ様です!」


 門番さん二人の張り上げるような声にはじかれて、私たち三人は門の外へと飛び出した。

 その先には、先ほど名前が出た隊長と幹部二人の姿がある。

 彼らは悠々とした足取りでこちらに向かって歩いてきていた。


「みなさんっ! おかえりなさい!!」


「お疲れっす! ハシさん、土産は?」


「慎太兄ちゃん、久しぶり! 会いにきたよーー!!」


 一斉に駆け出して彼らの周囲を囲んだ私たちを見て、三人はどこかほっとしたように笑みをもらした。

 こんなところで偶然鉢合わせるなんて、ついてるな。

 せっかくだから皆さんの帰りを出迎えてから出発したいもの。


 主人の帰りを喜びじゃれつく子猫のような私たちの言葉に割り込んで、最初に口を開いたのは中岡隊長だった。


「峰、わざわざ来てくれたのか」


「そーだよ! 慎太兄ちゃん、あれから全然ウチに来ないからさぁ」


「悪かった。これ以上菊屋に迷惑をかけるわけにはいかんからな」


「ウチは大丈夫だって! 今でも慎太兄ちゃんの味方だよ!」


「……ありがとう」


 隊長は、かすかに目を細めてそっとミネくんの肩を叩いた。

 言葉の端々に気になる部分が目立つけれど、一体隊長と菊屋さんの間に何があったんだろう。

 ミネくんは隊長を慕っているようにしか見えないだけに、迷惑行為をはたらいたというようなことも想像しにくい。



「ところでみなさん、これからお出かけですか? 天野さんはかすみさんのお見舞いに?」


 わざわざ出迎えに出てきたわけでもあるまいと、大橋さんは首を傾げながらこちらに視線を向けた。


「そうなんです。螢静堂に寄ったあと、ミネくんと行くところがあって……」


 ね、とミネくんに目配せをすれば、彼は目をきらきらと輝かせながら頷いてみせた。


「慎太兄ちゃん聞いてよ! みこちゃんって、天野川光先生の娘さんなんだって! 天野先生は、望月千夜先生の著作に挿絵を描いてる人なんだよ!!」


「ほう。望月氏というのは、峰がいつも薦めてくる戯作者だったな」


「うん! だからこれを機に、慎太兄ちゃんも望月先生の作品を読んでみるといいよ!」


「そこまで言うなら読んでみようか。挿絵も気になるしな」


 やたらと鼻息荒く語る峰くんを苦笑まじりに見守りながらも、隊長は小さく肩をすくめて私のほうを見る。


「でしたら、今手元に一冊だけ持ってます。よかったら大橋さんや香川さんも読んでみてくださいね」


 と、風呂敷包みから取り出したくそたろう巻の一を隊長に手渡せば、その脇から大橋さんと香川さんが表紙を覗き込んだ。


「ばかぢからくそたろう……? なんだいこりゃ」


「迫力のある絵ですね。どのようなお話なのでしょうか」


 眉をひそめながら鼻であしらう香川さんと、奇抜な表紙に目を奪われてしげしげと見入っている大橋さん。正しい大人の反応だと思う。


「ははは、すごい表紙だな。三人とも、これから出るんだろう? 気をつけて行ってくるんだぞ」


 表紙からあふれ出る馬鹿馬鹿しさがツボに入ったのか、隊長は声を出して笑いながらそれを懐に押し込んだ。

 なんだか嬉しいな。

 ぱっと見て笑ってもらえる絵というのは、父が目指していたもののひとつだったから。


「オレがついてっから心配ないっすよ。夕方ごろには帰ります!」


「それじゃあ、いってきますっ!」


「慎太兄ちゃん! 頼まれてた本、ケン兄の部屋の机の上に置いてあるから、そっちも読んでね!」


 三者三様の別れを告げて隊長たちに手を振ると、私たちは螢静堂へと向けて歩き出した。

 時刻はおそらく、昼九ツ近く。

 今日は走りこみをする様子もないから、いつもよりも少し到着は遅くなってしまうかもしれないな。



「お見舞いに行くとか言ってたけど、誰か病気?」


 しばらく歩いたところで、最後尾を歩いていたミネくんが私の顔を覗き込むようにして尋ねてきた。


「そうなの。私の恩人というか……お姉ちゃんみたいな人なんだけど、その人が怪我をしててね」


「へぇ。お姉ちゃんみたい、ってことは血はつながってないんだね」


「うん。父と一緒に長年下宿してたお店の娘さんで、何かと私のお世話をしてくれた人なんだ」


「そっか、下宿先の! そりゃもう家族みたいなもんだよねぇ」


 やけに納得した様子で元気よく相槌をうつミネくんは、なにやらそんな状況が自分にも当てはまるかのような物言いだ。

 書物屋さんでも下宿人の受け入れなんかは珍しくないことなのかな?


「そういや峰も、やたらと中岡さんに懐いてるもんなァ」


「うん! 慎太兄ちゃんがいた頃は楽しかったなぁ」


 ――隊長がいた頃は?

 ということはつまり……。


「中岡隊長って、菊屋さんに下宿してたの?」


「そうさ! ついこの間までね。ちょっといろいろあって、出ていっちゃったんだけどさ……」


 うつむくミネくんの表情は、なんとも寂しげに翳っている。


 いろいろあって――か。

 隊長は、矢生一派が裏切る前は、定宿をとって屯所と行き来していたと言っていたっけ。

 てっきりどこかの旅籠のことを指しているのだと思っていたけど、菊屋さんに間借りして寓居先にしていたんだな。

 ということは、あの晩水瀬達に襲撃されたのは菊屋さんということになる。

 ミネくんの口調からすると、お店にそう深刻な被害が及んでいるわけではなさそうだけど……やっぱり隊長としては、距離を置かざるをえないよね。

 ついさっき「迷惑をかけた」と口にしていたのはそういうことなんだ。



「大変だったね、ミネくん」


「ん? いやぁ、全然! ボク慎太兄ちゃんに憧れてるからさ! どこにいようとついていくさ!」


「ふふふ、隊長のこと慕ってるんだね」


「まぁね、いろいろと世話になったから。みこちゃんのお姉さんも、はやくよくなるといいね」


「うん! ありがとうっ」


 今のところ私には、お見舞いに行くくらいのことしかできないけれど。

 少しでも元気になってもらえるように、そばで支えてあげられたらいいな――。




 螢静堂に到着すると、出迎えてくれたゆきちゃんに先輩とミネくんの相手を任せて、私はかすみさんの部屋へと急いだ。


 廊下を曲がった突き当たりにある、日当たりのいい一室。

 ここを訪ねるのは何度目だろう。

 障子に手をかけるたびに、鼓動がはねあがって指先がふるえる。

 かすみさん……。

 本当はまだ、完全にあの夜の恐怖を払拭できてはいないはずだ。

 つらい気持ちを押し殺しながら平静を装ってはいないかと、ふいに心配でたまらなくなる。

 無理を続けていたら、いつか抱えきれなくなってしまうから。

 なにか不安なことがないか、注意して私が話を聞いてあげなきゃ。



「かすみさん、美湖だよ。入ってもいい?」


「うん。いいよ」


 障子ごしに返ってきた声色の柔らかさに、ほっと胸をなでおろす。

 ……よかった。泣いてはいないみたいだ。

 そっと障子を開けて部屋の中へと入っていくと、かすみさんの脇にはやえさんが座っていた。


「あ、やえさんもこんにちは。かすみさん、遅くなっちゃってごめんね。気分はどう?」


「すごくさっぱりしてるよ。ゆうべ、やえさんとゆきちゃんが体を拭いてくれたの」


 目を細めて微笑みながら真新しい着物の袖を持ち上げて振ってみせるかすみさんに、つられてこちらも笑顔になった。

 そっか。布団から出られない今のかすみさんにとっては、お風呂に入れないことが何より不便なところだよね。

 体が清潔になったことでいくらか不快感も拭われたのか、彼女は言葉通りにさっぱりと気持ちのよさそうな表情を浮かべている。


「よかったねぇ! やえさん、ありがとうございます!」


 かすみさんの手をとって小さく上下にふりながら、やえさんに謝意を述べる。

 ところが神楽木家の真面目な女中さんは感謝されることに慣れていないようで、なんのことはないと固辞するように首を振った。


「わたくしにできる事は少ないですので、このくらいは」


「いつもそばでお世話してくださって、ほんとうに感謝しているんですよ、やえさん」


「かすみお嬢様……もったいないお言葉でございます。今後もなんなりとお申し付けくださいませ」


 きっちりと深く頭を下げるやえさんは、さすがかぐら屋の女中さんだ。

 一つ一つの動きにとても重みがある。


 けれどかすみさんにとっては、そんな格式ばったお堅い対応が少し窮屈なようで、眉尻を下げて困ったような笑みを浮かべている。

 二人は年のころも同じくらいだから、きっかけがあればもう少し仲良く打ち解けられそうな気がするけど……。

 絵や役者さんの話をしていた時なんかは今よりもずっと自然に会話できていたっけ。

 とはいえ、いつもあんな風にとはいかないんだろうな。やっぱり主家の人間と女中さんでは、暗黙のうちに壁ができてしまうものなのかなぁ。



「あ、そういえばね、かすみさん! きのう、いい写場を見つけたんだ!」


「ほんとう? 寺町通のお店とは別の場所で?」


「そうなの! 寺町通のお店のお弟子さんが新しく始めたところでね、女の写真師さんが撮ってくれるんだよ!」


「女の方が写真師を……すごいわね。私、その方に撮っていただきたいな」


「うんっ! 元気になったら行こうっ! 私もそれまでに、写真のことを勉強しておくね!」


 シノさんの腕前がどんなものなのかはまだ知らないけれど、師匠のもとから独立して開業しようというのだから申し分はないはずだ。

 まだまだ男の人が苦手なかすみさんにとっては、写真師さんも女の人の方が緊張しなくていいだろう。

 せっかくの初写真なんだから、いい表情で写ってほしいもんね。


「楽しみにしてるわね。あ、そうだ、美湖ちゃん。兄さまから伝言があって」


「なになに?」


「昨日の文の返事を近いうちに渡すから、また螢静堂まで来てって……と言っても、美湖ちゃんは毎日来てくれるから心配ないね」


「あ、うん! そういうことなら大丈夫! 明日も明後日も、会いに行くから!」


 返事をくれるのならいつだって歓迎だ。

 きっと雨京さんは、心当たりのある画商や収集家のもとを一通り回ってみてから返事を書くつもりだろうから、すぐにとはいかないだろう。

 隊長への文では、新選組や奉行所からの情報をまとめる必要もあるだろうし、早くて二、三日後かな。

 朗報を期待して待っていよう。



 それからやえさんも交えて三人で楽しく雑談し、かすみさんの部屋をあとにした。

 やえさんやゆきちゃんが極力近くにいて一人にしないように気をつかってくれているからか、かすみさんは思ったよりも安定している。

 このまま少しづつ、体の傷といっしょに辛い記憶を薄めていってくれたらいいんだけど――。




 先輩たちが待つ居間へ戻ると、部屋の畳の上には何枚もの絵が所狭しと広がっていた。

 鮮やかな色づかいの肉筆画……これは、ゆきちゃんの絵だな。


「どうしたの? こんなに絵を広げて」


 絵草紙屋の店先も顔負けの、なんとも目を奪われる光景だ。

 先輩もミネくんも関心したように作品を手にとって眺めながら、しきりに褒めそやしている。


「うちが天野先生に絵を習っとったって話したら、峰くんが見たい言い出すもんやから」


 気恥ずかしそうに笑みをこぼしながら、ゆきちゃんは私の隣まで歩いてきた。

 どうやら、ミネくんともすっかり馴染んでしまったみたいだ。

 さすがゆきちゃん、人と打ち解ける達人だね。


「ゆきちゃんの絵、すごく上手だもんね。いろんな人にどんどん見せたほうがいいよ!」


「あんまし見せる機会ないから、正直そわそわしてまうわぁ」


 そう言われてみれば、ゆきちゃんは珍しく落ち着かない様子であちこちに視線を泳がせている。

 ゆきちゃんみたいに上手く描けても、他人に絵を見せるのは恥ずかしいものなのか。意外だなぁ。

 私がこんな絵を描けたなら、もっと積極的に、面倒くさがられる勢いで周りの人に見せびらかしたくなりそうだけど。



「謙遜しないでよ! すごいよ、この絵!!」


「そうだぜ、めちゃくちゃうめぇじゃねぇか! そのへんに売ってても違和感ねぇよ!」


 ミネくんと先輩は、夢中になって絵箱の中をあさっている。まるでそれが宝の山であるかのように。


「ゆきちゃんは武者絵がとくに上手いんですよ、先輩」


「おう! いいよな、これとか。筋肉質な腕の具合がうまいこと描かれてるぜ……!」


 先輩が賞賛の言葉を送ったのは、馬上の武者の絵だ。

 こうした戦場での凛々しい姿は男の人なら心震える場面だろう。

 ゆきちゃんの絵はほとんどが凛々しい武人を描いたものだけど、中には美人画やかわいらしい犬猫の絵なんかもある。

 いろんな題材に挑戦してみて、最終的に自分が向いている作風が分かってきたと本人は言っていた。

 戦う男、何かに命を賭して駆け抜ける男。

 そういったものが、ゆきちゃんの描きたい題材らしい。



「ねぇ、ゆきちゃん! この絵絶対売れるよ! ためしにボクに預けてみない!?」


 ぱっと顔を上げたミネくんが発した言葉は、突拍子もないものだった。

 彼はいたって真剣な様子で、数枚の絵を片手にゆきちゃんににじり寄っている。

 ああこれは、商売人の顔だ。


「預けるって……ほんで、どないすんの?」


「ボクが行商で売る!」


「いやいやいや! 何言うてんの! 売れるわけないやん、こんなド素人のらくがき! 便所紙にされてまうわ!」


 すごい言いようだなぁ。

 もはや謙遜の域を越えてしまっている。

 この自信のなさは、もしかしてむた兄譲り……?


「売り上げは折半……いや、七割そっちがとっていいよ。絶対に売ってみせるから」


「七割も? いやいや、でもアカン! 売れへんって! 画で食ってくってのはとんでもなく厳しいことなんやから!」


「うーん、それじゃ八割あげる。こっちは元手も手間もかかってないからね。ただ、新しい絵師を発掘して菊屋の名を上げたくてさ!」


「九割でも十割でも、嫌や! うちは金のために描いとんのやない! 楽しいから好きで描いてるだけや!」


 ゆきちゃんはきっぱりとそう言い切って、畳の上に散らばった絵を一枚一枚大事そうに拾い上げ、絵箱に収納した。

 これ以上そういった交渉はお断り、といった頑固な姿勢だ。


 ミネくんが、諦めきれないまなざしでこちらを見る。

 どうしよう、絵仕事が大変なのはよく分かっているだけに、安易なことは言えないけど……。


「ゆきちゃん、私もね、ゆきちゃんの絵は見た人が喜んでくれるいい絵だって思ってたよ」


 再会して初めて絵を見せてもらった時に、確かにそう感じた。

 本心からの私の感想だ。


「おおきに、みこちん。でもうち、兄ちゃんやみこちんに見せて喜んでもらえるだけで十分や。天野先生みたいに堂々と世の中に公表はでけへんわ」


「人に見せるのは、好きじゃない?」


「せやね……たぶんそう。大勢の人に見てもらわんでもええ。うちは何より楽しんで描きたいだけや」


「そっか。ゆきちゃんがそう思ってるなら無理にとは言えないね。また、何か描いたら見せてね!」


「うん。みこちんになら、いつでも見せたるよ」


 そうして、一応この場はおさまった。

 本人がここまで拒絶するのだから、これ以上口をはさむことは難しい。

 私としては、ゆきちゃんの絵が世に広まってくれたらすごく嬉しいとは思うけど。

 でも、商売になれば褒められるだけでは終わらないもんね。

 自分の作ったものでお金をもらうという難しさはきっと、その業種を経験した人でないと分からない。


 ミネくんは後ろ髪をひかれるようにゆきちゃんが抱えあげた絵箱を見つめているし、先輩は珍しく困り顔で腕を組んでいる。

 二人ともきっと、いい機会を得たのにもったいないと思っていることだろう。

 それでもこういうものは、本人が決めることだから。

 どんなにひとつのことに熱を上げていても、名声や出世を望まない人だっている。

 それって、何事にも通じるものなんじゃないかな。

 たとえば、志士さんにだって――。




「あーあ、絶対売れると思うのになぁ」


 螢静堂を出てからも、ミネくんは口惜しそうに口をとがらせている。

 今は彼の先導で「ばかぢからくそたろう」の版元である花文堂(かぶんどう)さんへと向かっているところだ。

 花文堂さんは螢静堂から南東へ向かい、鴨川を渡ってすぐのところにあるらしい。

 川沿いの道は風が気持ちいいなぁ。また釣りをしたくなってくる。


「ゆきちゃん、思ったよりも頑固だったよな。上手いのにもったいねぇよ」


 田中先輩も、まださきほどのやりとりを引きずっているようだ。

 頭のうしろで両手を組みながら、足元に転がっている石ころを蹴り上げる。


「父いわく、上手い人には、はるか上が見えているらしいですよ。私たちから見て売り物と変わらない絵でも、ゆきちゃんから見れば未熟なのかもしれません」


「いやぁ、そんなことないよ! ボクだってそれなりに絵は見てきたほうだけど、ゆきちゃんの絵はきちんと基本をおさえたしっかりしたものだと思うよ!」


「でもね、ミネくん……」


「それにさ! 天野先生に習ってただけあって、どこか先生の筆はこびに似てるところがあると思うんだ!」


 ミネくんの熱意は冷めやらず、自分の眼は確かなのだと強調してやまない。

 とはいっても、私たちがいくら熱くなったところでどうにもならない話だ。


「うーん。気持ちは分かるけど、やっぱりゆきちゃん次第だから。あんまり無理強いはしないようにしようよ」


「……もうちっと自信もてねぇもんかねぇ。いつもは強気な子なのになァ」


「そうですねぇ。でも今のところは、見せてくれた絵を褒めてあげるくらいしかできないですよね」


 いくら身内に褒められても自信をもてない人というのはいるから、私たちの言葉が自信につながるとは限らないけれど。

 うちの父なんかもこだわりが強くて、誰に褒められようと自分が気に食わないものであれば容赦なくやぶり捨てたりしていたっけ。


 絵師って、難しいものなんだなぁ。

 くそたろうの交代絵師も、揉めずにすんなりと決まっていたらいいんだけど――。



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