仮面の紳士と美少女異世界~ガールズ・ファンタジア~

エグニマ

プロローグ

ep0:仮面の紳士

「吾輩は百合が大好きだ!!」

「は、はい?」


何も見えない暗い空間に2つの光が差し込んでいる。

1つは真っ黒なタキシードを身に着け、顔の上半分を仮面で隠している男を

1つは白い羽衣を纏い、背中には真っ白な羽を生やした美しい女性を


「分からんのか?何気ない平凡な日常、昼下がりの午後、美少女同士がボディタッチをして和気あいあいと黄色い声を上げながら教室で騒ぐ声を!その光景を!その声を!あまりの尊さに悶絶して死んでしまうだろうが!!!」


「えぇーと……あの、藍野神志あいのしんじさん……でしたよね?あなたは死んだことは覚えていますか?」


「死んだことは分からん、だが最後に見た光景は覚えているぞ『月刊!百合ゆりしぃ特別付録号』を読み、あまりの尊さに意識を失った。その際に多少鼻血を出したくらいだが、それが何か?」


困惑する羽衣の女性に対して、仮面の男……神志は意気揚々とした態度で話していた。

1つ咳払いをした女性は仕様書マニュアル通りの説明を行った。


「コホン……私は新たな運命を決める女神フォンと申します。藍野神志さん、あなたはまだ若くして亡くなられました。本来であればこの後に進む道はランダムの転生ですが、あまりにも不憫。私が出来る範囲であなたの望んだ世界への転生をすることが可能ですがいかがでしょうk……」


「世界が美少女でいっぱいの世界を所望する!!多少、男がいても構わないが比率的には9:1もちろん美少女が9だ。それから可能な限りで構わない、吾輩が思ったことができる力を寄越すといい、無論断るのはそっちの勝手だが……その代わりに吾輩が語る『百合とは何か?』『百合初級編』と百合に関しての話を永遠と……」


「ちょっ!?ちょっと待ってください!!そんな勝手なことが許されるはずがありませんよ!?」


フォンと名乗る女神がまだ説明をしている途中にも関わらず、神志は自分の希望……というよりも願望や欲望といったことを言い放った。

最初こそは聞いていたフォンであったが、だんだんとエスカレートしていく話をメモするために持っていたタブレット端末のような機器を落としそうになる。


「むぅ?それは何だ、吾輩に見せるといい……ふむ」

「あぅ!?返してください!個人情報が詰まっているんですぅ~!!」

「何だ、転生後の吾輩のデータか何かか?それならば……ここをこう、それから……」

「あぁ!!ダメダメ、駄目ですってば!!勝手に弄らないでくださいぃ~~!!」


神志はフォンからタブレットをするりと抜き取ると自分の能力ステータスを勝手に操作し、決定ボタンを押した。


「あーー!!!」

「ふむ、設定はしておいたぞ。大丈夫だ、どんな願いでも叶えると……なんて便利すぎるスキルなど設定していない、あくまでも吾輩が楽しめそうなものを設定させてもらっただけだ、安心するがいい。ふははは!!」


ピーッ!という音と共に完了の文字が画面いっぱいに映し出されると、うなだれるフォンにタブレットをぽいっと放り投げると満足気に言った。


「ぐすん……汚されました、こんな方初めてですよぉ……」

「さてと、フォンとやら。吾輩をさっさと百合美少女がいる世界にとっとと送り込むといい」

「さっき願った世界とは違いますよね!?」

「どうでもいいから、さっさとするがよい」


涙を目尻浮かべながらタブレット型の機器を操作するフォンは神志の要求する世界を選び出すと、決定ボタンを押した。


「ほぅ……魔方陣か、アニメやゲームの世界だけだと思っていたが、死後の世界ではなんでもありか」


ぼんやりとした淡い光のサークルが神志の周りに広がる。文字は神志が見たことのない形をしており、女神達の世界の文字なのだと興味津々に見ているとフォンが言った。


「藍野神志さん、これから行く世界は今まであなたが過ごした世界とは全く違います。少しの油断から死んでしまうこともあります……次、死んでしまった時はランダムで転生することになりますのでその……気をつけて……」


「我が願いが叶う世界で簡単に死ぬと思うか?笑止!いかなる方法を用いてでも生き抜いて見せよう!!……向こうの世界から貴様に連絡できるような能力も吾輩に備わっている、困ったら連絡する。さらばだ!ふははは……」


サークルが神志を包み込むと、その姿は完全に消えていた。

最後だからと、少しは心配してあげようと思っていたフォンのことなど微塵も気にせず旅立った神志に、わなわなと手を振るわせると大きな声でフォンは叫んだ。


「もう……二度と戻ってくんな~~~!!!!」



フォンの怒りの声が届くはずもなく暗い空間に反響する。


この日から神志は美少女異世界ガールズ・ファンタジアでさまざまな出来事に遭遇することを

まだ知らない。

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